GALLERY TARGETでは12月4日より、刺繍作品を発表する高木耕一郎の個展「Is this my God?」を開催。
本展にて高木がテーマにするのは「お金」。
扱い方如何では薬とも毒ともなるお金に注目した高木は、その独特な作品世界で物事の背後に潜む二面性を表現する。
”美徳そのものもみだりに用いれば悪徳に変わり,時として悪徳も行い次第で価値あるものとなる。
このか弱い花のつぼみには 毒も潜めば薬効もある。 匂いを嗅げば,その効力で五体を元気づけ 口に含めば,心臓を止め五感を殺す。
こうして,仁徳と悪徳という二人の王が人間界でも植物界でも常に対立し戦っている。
悪いほうが勝ちをおさめるとき たちまち死という害虫がその植物を枯らしてしまう。”
ウィリアム・シェイクスピア「ロミオとジュリエット」より引用
サンフランシスコで生活をした経験のある高木は、パンクロック、アンダーグラウンドコミック、スケートボードなどのサブカルチャーから多くの影響を受けた。
それらのカルチャーにはそれぞれの独特な世界観のデザインがあり、メッセージがあり、ムードがありました。
また同時にカトリックの家系で育った幼少の高木は、教会を彩る宗教絵画や神父の纏う法被など、自然と視界に入るそれらの装飾品や聖書に描かれる宗教世界からも影響を受け、そこには当然きらびやかな刺繍装飾も。
高木が表現メディアとして主に用いる刺繍の歴史を覗いてみれば、ヨーロッパの僧院では人々の信仰心を高めるための荘厳な装飾に用いられ、宮廷では豪華な衣装などによって高い身分、また権力や富の象徴として絢爛な刺繍が用いられた。
高木の感性はこういった「反体制」や「個性」を強調するサブカルチャーと、唯一の神を崇拝する「信仰」との間で育てられたのだ。
そんな高木が生み出す作品の画面上には、サブカル性を感じさせる強烈なメッセージとそのタイポグラフィーデザインがあり、同時に宗教性を感じさせる動物たちが語りかける神話的で寓話的な世界が混在している。
それはストリートで生まれたイソップ物語のようだと言えるかもしれない。
お金を崇める者、忌み嫌う者、人によってお金は神のようでもあり悪魔のようでもあると話す高木。
それぞれにとって神とは何であるか、価値とは何であるか。
「Is this my God?」と題された本展。
あらゆる物の価値、宗教の立ち位置が揺らぐこの混迷の時代にアーティストとしてそれを問うことは最も自然な流れであると言えるだろう。
本展では刺繍だけでなく高木がサンフランシスコで学んだシルクスクリーンなども組み合わせたミクストメディア作品も発表される。
可愛らしくも不気味な目やポーズをした動物たちが問いかける「お金」というテーマを孕んだ作品は、物事の神的な面と悪魔的な面の両方を語りかけてくるだろう。
高木耕一郎「Is This My God?」
2021年12月4日 (土) – 18日(土)
GALLERY TARGET
渋谷区神宮前2-32-10
www.gallery-target.com
12:00 – 19:00
*日•祝休廊