衣・食植・住
“植物が命をまもる衣となり、命をつなぐ食となる”
――土にはぐくまれた食物と植物とが、有用性をもって生活の中に生き生きと生かされていたころのこと。
食(植)物の効能を見いだし、“衣” に仕立て纏うことで身を守り、“食” することで命をつなぎ、“住” まいを構えることで雨風を凌ぎ暮らしを守る。 かつての衣食住に息づいていた生きるためのさまざまな技法は、この限りある自然からのギフトを余すことなく生かし切るために、人々が感覚を研ぎ澄ませ、 工夫を凝らし編み出してきた知恵の集積。そしてそれは、次に生きる子どもたちが、さらなる技法を生みだすための糧となるギフトでもあった― ―
restaurant eatrip と the little shop of flowers、東京・原宿の同じ敷地で隣合わせに店を構え、20年という月日をともに歩んできた野村友里と壱岐ゆかり。料理と花、どちらもその本質を見つめれば、土という深いところでつながり合い、この生業において大切にすべきことは何なのかを互いに探究する旅を続けてきた。食(植)物という “生” を扱う日々の中で得た言語化できない感覚、その瞬間の連続を一冊の本にまとめた共著
『tasty of life』(2019年5月刊行・青幻舎)から3年。2人の探求は、あらゆる生物の循環をもたらす土へと向かい、その循環の一部となれるような技法を今の時代なりの方法で編みだそうと歩みを進めている。その活動こそが、本展のタイトルでもある「Life is beautiful」。土の循環に暮らしがしっかりと寄り添っていたかつての衣食住から何を受けとり、どう生かし、次へとつないでいけばよいのだろう。この探求の過程において道標となってくれている人々とともに、想像を羽ばたかせ、考えを深めていく場としての展覧会。
本展 「衣・食植」では、美術家で近世麻布研究所所長の吉田真一郎が、古来日本において特別な布であった大麻布を今に蘇らせるべく、現代の紡績・製織技 術 のもと完成させたばかりの「麻世妙―majotae」にフォーカス。日本が循環型社会であった江戸時代、「聖なる植物」として神事に欠かせないもので あり、人々の生活の中心にあった効能高い植物、「大麻、苧麻」。土に育まれた大麻草の繊維を採り、積み、紡いだ糸で織り上げられた、知恵の結晶のような古い大麻布のコレクションに触れながら、これからの暮らしに生きる現代の大麻布「麻世妙―majotae」の可能性について紐解く。土に種を落とし、また 芽吹くという循環の中で、植物は時に衣となり、時に食となって私たちの命をつないできた。この古くから繰り返されてきた営みを改めて体感しながら、 私たちが向かうべき新たな「衣食住」が見出せることを願って。
Life is beautiful : 衣・食植・住
会期:2021 年11月3日 (水) ー 11月30日 (火)
開場時間:11時ー20時
会場:GYRE GALLERY / GYRE 3F 東京都渋谷区神宮前5-10–1
03-3498-6990
https://gyre-omotesando.com/art/
主催:GYRE
展覧会企画:eatrip、the little shop of flowers
企画:野村友里 、壱岐ゆかり アートディレクション:吉田真一郎
会場構成:さとうひろき 協力:石田エリ、麻世妙チーム、永井佳子、水谷太郎、HiRAO INC