小山穂太郎 《Cavern》 2005 ゼラチンシルバープリント photo : 早川宏一
東京オペラシティアートギャラリー収蔵品の成り立ちを踏まえた企画展と、うす明かりの中を懐中電灯で照らして「見ること」を意識する企画展、2つの展覧会をライアン・ガンダーが企画。
イギリスを代表するアーティスト、ライアン・ガンダーが当館収蔵品をキュレーションする異色の企画。当初予定していたガンダーの個展は新型コロナウイルス感染症を巡る情勢の急激な悪化、ことにイギリスにおけるロックダウンにより、やむなく開催を延期することに。これに伴いガンダーから「この状況で僕にできることはないだろうか」「収蔵品展のキュレーションはイギリスからできるのでは」と申し出があり、当初上階(4階)で予定していた「ガンダーが選ぶ収蔵品展」を全館で開催することとなった。 コンセプチュアル・アートの新騎手として国際的に評価の高いガンダーは、日常生活のあれこれや、社会の仕組みなど、私たちが気に留めることすら忘れている物事をあらたな視点で観察し、解釈し、表現することについての第一人者といえる。その視点が東京オペラシティアートギャラリーの収蔵品に向けられたなら、私たちにとって新しい鑑賞体験になるだろう。
展覧会は3階、4階それぞれにテーマを設け、ふたつの企画として行う。4階の「色を想像する」では、収蔵品が故寺田小太郎のプライベート・アイ・コレクションであるという成り立ちを踏まえて展示方法が工夫されている。3階の「ストーリーはいつも不完全……」では展覧会の常識をくつがえす「うす明かりの展示室内を懐中電灯で照らしながら作品を鑑賞する」という試みを行う。「見る、そして想像する」ことをこれ以上なく意識させるライアン・ ガンダーならではの展覧会。困難な状況でも冷静に考え、発想の転換でよりよいものにしようとするガンダーの姿勢は、私たちの作品鑑賞そして日常生活に新しい視点をもたらしてくれるだろう。
李禹煥 《風と共に》 1989 岩絵具, 油彩, キャンバス photo: 斉藤新
吉永裕 《U-123-94》1994 顔料 和紙 photo: 早川宏一
堂本右美 《ここ》1998 油彩, キャンバス photo: 斉藤新
野又穫 《永遠の風景 17》1988 アクリル絵具, キャンバス photo: 早川宏一
大野俊明 《風の調べ:洛北大原 宝泉院》1995 顔料, 金箔, 和紙 photo: 斉藤新
赤塚祐二 《Untitled 159810》1998 油彩, キャンバス photo: 斉藤新
奥山民枝 《シリーズ迣:日尽》1999 油彩, キャンバス photo: 斉藤新
加藤清美 《明日の記憶》1976 油彩, キャンバス photo: 斉藤新
相笠昌義 《水族館にて》1976 油彩, キャンバス photo: 斉藤新
【展示構成 2つの展覧会の構成について】
4階「色を想像する」Colours of the imagination
故寺田小太郎のプライベート・アイ・コレクションである東京オペラシティアートギャラリー収蔵品の成り立ちと、寺田が収集のテーマのひとつとしていた「ブラック&ホワイト」に呼応して、黒と白のみの世界を構成。展示方法にも一工夫が。欧米の美術館では、個人の邸宅における伝統的な美術品の飾り方にならって、大きな壁面の上下左右びっしりと作品を並べる「サロン・スタイル」が採られていることがある。寺田個人の視点で集められ東京オペラシティアートギャラリーコレクションの特徴を踏まえ、作品はこの「サロン・スタイル」で展示される。
白髪一雄《貫流》1973 油彩,キャンバス photo: 早川宏一
二川幸夫《『日本の民家』簸川平野の農家 島根》1953-59 ゼラチンシルバープリント photo: 早川宏一
3階「ストーリーはいつも不完全……」All our stories are incomplete…
ここでは展覧会には当たり前にあるなにかが欠けている。それは「照明」。来場者は入口で懐中電灯を取り、うす明かりの展示室内で、作品を見るために自ら光を当てることになる。「あたりまえ」を「あたりまえ」と片付けず、そもそもを問い直すことは、ガンダーの制作姿勢の特徴のひとつ。来場者が「見たい」という気持ちを再確認するこの仕掛けは、通常の照明に照らされた展示では見逃してしまっていたものごとへの注目や、全体をもっとよく見たいとあちこちを照らすことによって、ひとりひとりが作品と一対一の親密な関係を作る機会となるだろう。
三宅一樹《YOGA―逆さの氣息》2006 木曽檜,桂 photo:早川宏一
ミズ・テツオ《Johann Sebastian Bach》1990 エッチング, 紙 photo:早川宏一
*懐中電灯で照らしながら作品を鑑賞ください。
【ライアン・ガンダー】
1976 年イギリス生まれのライアン・ガンダーは、コンセプチュアルアートの新しい地平をひらく作家として世界のアートシーンで注目を集めている。2019 年クンストハレ・ベルンの大規模な個展をはじめ各国で展覧会が開催されるほか、ドクメンタ、ヴェ ネチア・ビエンナーレなどの国際展での展示、2010 年セントラルパーク(ニューヨー ク)における屋外彫刻などのパブリックアートも知られている。日本では2017年に国立国際美術館(大阪)の個展およびガンダーのキュレーションによる同館の収蔵品展が同時開催されて話題に。
©Ryan Gander. Courtesy of TARO NASU Swan films / BBC, photo: Sam Anthony
ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展 『ストーリーはいつも不完全……』『色を想像する』
会期:2021年4月17日[土] – 6月20日[日]
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
開館時間:11:00-19:00(入場は 18:30 まで)
休館日:月曜日(5/3 は開館)
入場料:一般 1000[800]円/大・高生 600[400]円/中学生以下無料
主催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団 協賛:ジャパンリアルエステイト投資法人
協力:TARO NASU
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
*同時開催「project N 82 松田麗香」の入場料を含む。
*[ ]内は各種割引料金。障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料。割引の併用および入場料の払い戻しはできません。
*新型コロナウイルス感染症対策およびご来館の際の注意事項は東京オペラシティのウェブサイトをご確認ください。
また、最新の情報は随時ウェブサイト、SNS および特設サイトでお知らせします。