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東京都現代美術館「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」


マーク・マンダース スタジオ風景



触れると崩れそうな彫像、いつどこで作られたのか判然としないオブジェ、人の立ち去った気配が残るスタジオ、暗く長い廊下、… 静謐と不穏が混交する、マーク・マンダースの世界へようこそ。
東京都現代美術館では、現代のアートシーンに独自の位置を占める作家、マーク・マンダースの、国内美術館では初となる個展を開催する。
マンダースは、1968 年オランダのフォルケル生まれ。現在はベルギーのロンセにスタジオを構えている。1986年、18歳のときに、自伝的小説執筆の試みを契機に得たと言う「建物としてのセルフ・ポートレイト」という構想に沿って、以降30年以上にわたって一貫した制作を続けている。その構想とは、自身が架空の芸術家として名付けた、「マーク・マンダース」という人物の自画像を「建物」の枠組みを用いて構築するというもの。その建物の部屋に置くための彫刻やオブジェを次々と生み出しインスタレーションとして展開することで、作品の配置全体によって人の像を構築するという、きわめて大きな、そしてユニークな枠組みをもつ世界を展開。この虚構的な枠組みをベースとして類のないビジョンを示す独創的な作品世界は、彫刻の概念を掘り下げる個々の作品の質とあいまって、世界的に高い評価を受けてきた。本展は、作家本人の構想により、展示の全体を一つの作品=想像の建物のインスタレ―ションとして構成するもの。

個々の作品は、過去の美術史や私的な記憶に基づくイメージ、彫像や言葉、家具など様々なオブジェの組み合わせからなり、見る者に複雑な感情や時間感覚、思索と内省の機会を与える。これらは独立した作品として十分に魅力的だが、この大きな枠組においてみれば、また新たな表情で私たちを捉えるだろう。作品はすべてこの架空の建物の一部をなすものとして現れ、作家であるマンダース本人と架空の芸術家マンダースの自画像とが混交しながら消失・生起し、見る者を虚実の空間へと誘う。一方、個々の作品には互換性があり、それぞれは単語のように部屋や構成に従って置き換わることが可能と言う。それによって、この想像の建物全体は、いわば一つの自動的な装置のように不断に改変され、更新されていくことになるのだ。タイトルにある「不在(Absence)」は、インスタレーションに見られる時間が凍結したような感覚や静寂、既に立ち去った人の痕跡、作家本人と架空の芸術家との間で明滅する主体など、マンダース作品全体の鍵語として複数の意味を担うものだが、それはまたこの建物が作家の不在においても作品として自律的に存在し続けるものの謂いでもあるだろう。マンダースの世界は、その中に入る私たちを魅了しつつ、芸術の意味について、想像力や人の生の経験と時間について、あら ためて考えることを促す。
今回の個展は、このような独特な構造を持つマーク・マンダースの作品を十分に堪能できるきわめて貴重な機会だ。



Photo: Cedric Verhelst


展覧会のみどころ
緻密に作られた作品群―「凍結した瞬間」

マンダースの作品一つ一つは、私的な記憶や生活、複数の時代や地域の美術史など様々な要素を含んでいる。風化したように見える今にも崩れそうな脆い質感や、それとは逆に今作られたば かりのような粘土の艶、複数のパーツの緊張感にみちた思いがけない配置と違和感のあるスケール…。計算され、緻密に作られた作品からは、静謐さと不穏さの混交とともに、まるで、あるひとつの瞬間ですべてが停止しているような、時間の流れを失ったような感覚が引き起こされる。「凍結した瞬間」と作家が呼ぶその世界は、一方で朽ちることのない不変への憧憬をも呼び起こし、見る者に強い印象を残す。


マンダースの制作の中心、謎めいたインスタレーション

マンダースの個々の作品は独立していると同時に、「マーク・マンダース」という架空の作家の自画像として構想される「建物」に繋がっている。作品を見る私たちは、今ここで実際に作品を前にしながら、もう一方ではこの想像の部屋の中にも居ることになるだろう…。この虚と実の重ね合わさった空間こそ、マンダース作品の魅力の一つ。作家は 2019年3月から本展の構想を温めており、今回、当館の1フロア全体(1000 m²)を一つの作品として構築する。マンダースの制作においてインスタレーションはその中心をなす仕事。その場に立つことで得られる、彼の作品でなければ知ることのできない世界を存分に味わうことができる。


ヴェネツィア・ビエンナーレでも展示された代表作を初公開
本展で展示される作品には、近年のマンダースの重要な個展では必ず出品されてきた代表作が含まれる。中でも《夜の庭の光景》、《マインド・スタディ》は、それぞれベルギー、オランダの美術館から借用予定の作品で、本邦初公開となるマンダースの代表作。《マインド・スタディ》 は2013年のヴェネツィア・ビエンナーレに出品された作品。また、作家が「大好きな作品」だと語る、部屋のインスタレーションも展示する予定。
なお、金沢 21 世紀美術館でのミヒャエル・ボレマンスとの2人展(2020年9月19日―2021年2月28 日)での両者の対話を思わせる展示が印象に残っている方には、その作品の見え方の違いもぜひ味わっていただきたい。本展では展示の仕方が異なるため、特に2人展を御覧になった方には、マンダースの作品の魅力や意味を多面的に知ることのできる稀有な機会となるはず。

※開催内容は、都合により変更になる場合がございます。予めご了承ください。



マーク・マンダース《椅子の上の乾いた像》2011-15 年 東京都現代美術館蔵
Courtesy: Zeno X Gallery, Antwerp, Tanya Bonakdar Gallery, New York and Gallery Koyanagi, Tokyo



マーク・マンダース《未焼成の土の頭部》 2011-14 年
Courtesy: Zeno X Gallery, Antwerp & Tanya Bonakdar Gallery, New York/Los Angeles Photo: Genevieve Hanson



マーク・マンダース《マインド・スタディ》2010-11 年 ボンネファンテン 美術館蔵
Courtesy: Zeno X Gallery, Antwerp Photo: Peter Cox / Bonnefanten



マーク・マンダース《狐 / 鼠 / ベルト》1992-93 年
Courtesy: Zeno X Gallery, Antwerp, Tanya Bonakdar Gallery, New York and Gallery Koyanagi, Tokyo



マーク・マンダース《4 つの黄色い縦のコンポジション》 2017-19 年
Courtesy: Zeno X Gallery, Antwerp, Tanya Bonakdar Gallery, New York and Gallery Koyanagi, Tokyo Photo: Maris Hutchinson



マーク・マンダース 《黄色と青のコンポジション》2014-18 年
Courtesy: Zeno X Gallery, Antwerp Photo: Peter Cox


[#Beginning of Shooting Data Section]
Nikon D800E
2014/04/16 15:11:23.10
Time Zone and Date: UTC+1, DST:ON
RAW (14-bit)
Image Size: L (7360 x 4912), FX
Lens: 24-70mm f/2.8G
Artist: Peter Cox Eindhoven
Copyright: naamsvermelding verplicht
Focal Length: 32mm
Exposure Mode: Aperture Priority
Metering: Matrix
Shutter Speed: 1/8s
Aperture: f/11
Exposure Comp.: +1.0EV
Exposure Tuning:
ISO Sensitivity: ISO 100
Optimize Image:
White Balance: Auto1, 0, 0
Focus Mode: AF-C
AF-Area Mode: Dynamic, 21 points
AF Fine Tune: ON(0)
VR:
Long Exposure NR: OFF
High ISO NR: OFF
Color Mode:
Color Space: Adobe RGB
Tone Comp.:
Hue Adjustment:
Saturation:
Sharpening:
Active D-Lighting: OFF
Vignette Control: OFF
Auto Distortion Control: OFF
Picture Control: [SD] STANDARD
Base: [SD] STANDARD
Quick Adjust: 0
Sharpening: 3
Contrast: 0
Brightness: 0
Saturation: 0
Hue: 0
Filter Effects:
Toning:
Map Datum:
Dust Removal: 2014/04/07 19:54:35
[#End of Shooting Data Section]


マーク・マンダース《舞台のアンドロイド (88%に縮小)》2002-14 年 Courtesy: Zeno X Gallery, Antwerp Photo: Peter Cox


作家プロフィール
マーク・マンダース Mark Manders
1968 年、フォルケル(オランダ)生まれ。現在、ベルギーのロンセを拠点に活動。1988 年から 1992 年までアーネム市芸術大学でデザインを学ぶ。1986 年より「建物としての自画像」と称した独自のコンセプトを展開。その想像の部屋に置かれる彫刻 やオブジェを制作し、一連のインスタレーションとして発表している。また、1998 年にはロジャー・ヴ ィレムスらとともに出版社「ローマ・パブリケーションズ」の設立に関わり、自身のアーティストブック や展覧会カタログをはじめ、他のアーティストの書籍も多く手掛ける。作家の代表作である架空の新聞も この出版社で制作されている。展覧会としては、これまで、サンパウロ・ビエンナーレ(1998 年)、ドク メンタ 11(2002 年)、ヴェネツィア・ビエンナーレ(2013 年)など多くの国際展に参加。個展として、 2008 年から 2009 年にわたるヨーロッパ巡回展、2011 年のアメリカ巡回展など多数。2020 年にはオラン ダのボンネファンテン美術館で大規模な個展が開催。近年は、パブリック・アート・ファンド・プログラム(2019 年、セントラル・パーク、ニューヨーク、アメリカ)、ローキンスクエア(2017 年、アムステルダム、オランダ)で大規模な屋外彫刻を手掛けている。日本での主な展示として《東京 ニュースぺーパー》を含む「テリトリー オランダの現代美術」オペラシティ・アートギャラリー(2000 年、東京)、「あいちトリエンナーレ」(2016 年、愛知)、「ミヒャエル・ボレマンス マーク・マンダースダブル・サイレンス」金沢 21 世紀美術館(2020年、石川)がある。


展覧会概要
会期 2021年3月20日(土)- 6月20日(日)
休館日 月曜日(5月3日は開館)、5 月 6 日
開館時間 10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
観覧料 一般 1,500 円 / 大学生・専門学校生・65歳以上 1,000 円 / 中高生 600 円 /小学生以下無料
会場 東京都現代美術館 企画展示室 3F
東京都現代美術館 〒135-0022 東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
TEL:03-5245-4111(代表)
またはハローダイヤル 050-5541-8600(9:00-22:00 年中無休)
主催 公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 助成 オランダ王国大使館、モンドリアン財団

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