心とカラダをむきだしにするという覚悟
「いやあ、本当によくできたホンだなあって。人間性とか動物性、本能や欲望、男と女、日本人であること、いろんな要素が混在していて、凄く面白いと思いましたね」
俳優、池松壮亮は台本に触れた時の印象をそう振り返り、真っ直ぐな瞳をこちらに向けた。
彼の主演作『愛の渦』は、2014年の邦画界における「事件」とも言うべき怪作だ。演劇ユニット「ポツドール」の舞台作として第50回岸田賞を受賞した戯曲を、ポツドールの主宰、三浦大輔が自ら新たな装いで堂々映画化。
舞台は都心マンションの一室。職業も年齢もバラバラ、名前も分からない8人の男女がそこに集い、心もカラダも剥き出しに朝まで乱交パーティを繰り広げるーー。
池松は出演を決めた理由に「台本の面白さと、そして三浦さんという存在」を挙げ、こう付け加える。
「これまで三浦さんの名前は知ってましたけど、ちょっと遠い存在だと思ってたんです。だからオファーを頂いた時には驚きましたね。自分のところにこんな話がくるのか、って」
とはいえ、全編123分中、役者の着衣時間はわずか18分半。この過激な作風に挑むにあたってはかなりの覚悟が要ったのでは?
「たしかに挑戦的な作風だと思いました。でも、僕、男ですから、脱ぐことには抵抗なかったですし。それ以上に、これは絶対に面白いものになる!って確信がありましたから」
一方、ヒロイン役は門脇麦。
彼女は今回、オーディションに参加して役を掴み取った。さぞ大きな葛藤があったものと思いきや、意外にも「それほど大変ではなかった」と言う。その理由は一風変わった選考過程にあるようだ。
「まず始めにマネージャーさんから台本を渡されて『読んで感想を聞かせてほしい』とのことで。目を通すと本当に面白くって、これを書いた三浦さんってどんな方なんだろうって興味が湧きました。そんな軽い気持ちでオーディションに参加したのですが、三浦さんにお会いした瞬間、もう直感で『この人、好きだな。参加したいな』と思えましたね」
もちろん、監督からの意志確認も慎重に行われた。門脇は続けてこう振り返る。
「三浦さんは鋭い方なので、私が軽い気持ちでオーディションを受けたのも見抜かれていました(笑)。それで『もう一度考えて2回目に来てほしい』と言われて。でもその2回目に呼ばれているのが一人だけというのを私は知っていたし、つまりそこに行くことが『やります』という決意表明でもあったんです」
こうして若き俳優達の起用が正式決定。彼らはこの後、カラダを激しく重ね合わせる前代未聞の撮影へ挑むことになる。はたしてその現場の光景、ふたりの目には一体どのように映ったのか−−−。
次回更新(2月21日予定)では現場の雰囲気、演技、出演者への想いなどについて、ふたりの胸の内側に深く迫っていきます。