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女性たちの対話によって制作されたシリーズ 松川朋奈個展「Love Yourself」

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松川朋奈の個展「Love yourself」がユカ・ツルノ・ギャラリーにて開催。本展では、母でもある自身の経験を踏まえて、女性たちとの対話を重ねながら母と子を描いた同タイトルのシリーズを発表する。
松川に特徴的な写実的でどこか劇的な印象を与える絵画は、同世代の女性たちへのインタビューの中で印象に残ったフレーズを作品のモチーフ及びタイトルとしており、彼女らとの対話を通して生まれてきている。初期作品からの日常生活に残された痕跡や仕草に表れる人間性や人間の内面への関心はそのままに、そのフラットで滑らかな表面上には、対話から導きだされた日常的な情景の一部がハイライトを当てるように再構成され、生活のなかに見られる脆弱性を別の価値観へと転換する試みがされている。
傷ついたハイヒールや脱ぎ捨てられた服、身体の傷、メイクの崩れなど、女性を取り巻く環境の主題から始まり、ここ近年は、シングルマザーとして子どもを育てている自身の環境や経験の中に生まれてくる困難や葛藤とも作品を通して向き合うようになった。母と子を描いた本シリーズでは、日本におけるひとり親家庭に対する世間な風当たりや、子どもをひとりで守り育てていくプレッシャーと直面するなかで、松川はこれらの状況をひとりの問題として終わらせるのではなく、より多角的に捉えるためにひとり親たちへの取材を行っている。本展の作品は、母親であるということや彼女たちがそうせざるをえなかった決断や葛藤、そして子どもたちを取り巻く環境など、独り身で子育てをする女性たちへのインタビューと対談を重ねることで制作されたもの。
タイトルである「Love Yourself」は、トロントの博物館に展示されていたオノ・ヨーコの参加型アート作品に使用されていた小石が盗まれるという事件に由来をしている。ある年配の女性が持ち帰ったという小石にはオノ・ヨーコの直筆で「LOVE YOURSELF」と書かれおり、松川はこの言葉に強く惹かれる。
彼女は数ある石の中から「LOVE YOURSELF」を選んだのだ。この言葉が彼女を突き動かしてしまったのであれば、この言葉にはなんと強い力があるのかと感じ、事件が強く印象に残った。「LOVE YOURSELF」という言葉に人を突き動かす言葉があるのならば、私は自分のようなひとり親たちにもこの言葉をかけたいと思ったのである。
私は、どんな環境にあっても、ひとり親が自分たちの行いを恥ずべきではない、自分の行動を強く信じるべきだと考えている。日本のすべてのひとり親が、子どもと自分自身を強く愛する気持ちを持つことを願って。

松川は、自身の経験やインタビューを通して、ひとり親家庭への待遇や支援が未だに十分ではない日本社会では、親として生きる女性が直面する社会的な困難は自己責任や自分の弱さとして片付けてられてしまう傾向が多く見られると話す。「Love Yourself」という言葉はそのような状況下にいる自分自身を愛することから始めよう、という松川のメッセージは込められている。これまでの制作の延長線上として、本シリーズにおいても意図されている価値転換は、同時に現実においても起こることが願われている。


松川朋奈「Love Yourself」
2019年3月9日 – 4月6日
開廊時間: 火 – 木、土 11:00 – 18:00、金 11:00 – 20:00
休廊日: 月、日、祝
会場: ユカ・ツルノ・ギャラリー 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F

アーティストトーク「母/ひとり親/アーティスト」
3月9日(土)16:30-17:30
ゲスト:荒木夏実(東京藝術大学准教授)

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