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text by Meisa Fujishiro
photo by Meisa Fujishiro

藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#52 ことば

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 最近メモをよく取っている。


 思考とは言葉だ。言葉を整理することで、心の渋滞や混乱が緩和され、平静を保つ上で効果をあげている。私は、結構熱量がある人間なので、マグマのような塊が、外へと出口を常に求めていて、それが滞ると自家中毒のような状態になる。長年自分と付き合ってきて、それなりに癖や性質を掴んでいるので、いかに自分を安穏に過ごさせるかのコツとして、アウトプット、出口を常に用意することを怠らないようにしている。
 移動の多いライフスタイルなので、家にいる時以外は体と心が移ろうような状態になっていることが多い。そういう時には思考が活発になり、良いアイデアが心に浮かぶことが多いので、ポケットには小さいメモ帳を用意して、考えの段落ごとにメモを取るようにしている。多い時は、次から次へとアイデアや思いが尽きないので、まるで自分相手に取材をしているような様相となる。
 繰り返すが、思考とは言葉で出来ている。言葉をいったん紙に乗せて眺めてみると、熱を帯びて思考に集中していた脳が、すっと冷静になって休まるのを感じる。それは地図を机の上に広げて眺めているようなもので、全体像がどの構成物によって成り立っているのかを概観できる。不安や混乱は、現在の状態を把握できないことが原因となって生じるので、それがスムーズにできるように自分に手を差し伸べることが必要だ。


 紙に書くか、スマホやタブレットを使うかは迷うところだが、今は紙のメモ帳を選んでいる。言葉だけでなく、ちょっとした説明図やイラストを添えたり、スクラップもするので、私にはアプリよりも利便性が高い。
気に入っているのは365note(www.365series.net)で、365ページが2センチほどの厚みに収まっている。トレーシングペーパーのような強度の高い極薄の紙が365枚あるので、かなり書き込める。思いつくままにページを気にせず書き込んでいくことで、脳から絡まった紐がするすると抜かれていくような気持ち良さがある。
 サイズは文庫大とそれほど小さくないのだが、このくらいが視認性においてちょうどいい。ページが多いものを敢えて使っているのは、以前に記したものを遡ってチェックする時があるからだ。過去の思考の履歴を確認することで、自分の現在地が明確になる。三ヶ月前に記していたことを、今また記しているような時は、膠着しているか、もしくはそのことに対する強い思いがあるかのどちらかで、それを判断する機会が持てる。
 筆記具は極細0.5mmのボールペンJET STREAMがいい。インクが裏にあまり透けないのがいい。デザインがいまいちなのは残念だが、ここは機能を優先させている。この種の紙との相性が抜群でストレス知らずだ。



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