話をアスプリーさんが提唱する食事法へと戻そう。
彼は、ITで大成功を収めた人らしい例えで、体調を改良していくことを、自身の体をハックすると言う。コンピューターのシステムやネットをハックするように、自分の生態をハックできるのではないかと。「自分の健康をモニターして、気分に、見た目に、仕事ぶりに、人間関係や全般的な幸福にも影響している、隠れた変動要素を見つけ出す」と彼は記している。アスプリーさんは、自分をモニターとして、数え切れないほどのダイエットを選び出し、試行錯誤を繰り返した。
彼の導き出した答えには、にわかには信じがたいものもある。例えば、大豆、果物は、避けるべきリスクの多いものに挙げられている。それに対して、脂肪はたっぷり摂った方が痩せるのだとも言い、自身の経験過程を記している。それぞれに科学的根拠がしっかりとした最新の知見を元に記されているのだから、説得力がある。さらには、最高の飲み物としてコーヒーが挙がるに至っては、軽いショックさえ覚えた。
もちろん、これらには、条件が付く。脂肪ならばなんでもいいわけでなく、上質のものだけがそれを認められている。チベットのバター茶のようなバターコーヒーに入れるバターは、グラスフェッドバターのみに限られている。グラスフェッドバターとは、牧草のみを食べて(グラスフェッド)育った牛のミルクから出来ている物で、さらにココナッツ由来のMCTオイルを加えて、攪拌して飲むだけのもの。だが、グラスフェッドバターやMCTオイルは、結構高価なので、試しづらいのだが、これを朝食代わりにするだけで、ダイエット効果があることが、アメリカのセレブで広まり、ブームになったということだ。