とにもかくにも、美しい映画である。保守的なウィーン美術史に、性的な営み、人の死に触れる作品で衝撃を与えたエゴン・シーレ(1890~1918年)。16歳の妹をモデルにした最初の裸婦画、幼女性愛疑惑での逮捕ーー28年という短い生涯には、数多くのスキャンダラスな逸話がつきまとう。美男として知られたシーレを演じたのはモデル出身のノア・サーベドラ。その演技力もさながら、目を奪われる白皙の美貌は、常に性の匂いを濃厚に漂わせたシーレの生涯と作風をなによりも饒舌に描いている。
そして、エゴン・シーレによる「ヴァリの肖像」「横たわる女」やセセッシオンのクリムトによる「ベートーベン・フリーズ」など十数点の名画が映画全編にわたり効果的に映し出されるのも見逃せない。エゴン・シーレ没後、約100年。今なお、多くの画家やアーティストに多大なインスピレーションを与え続けるシーレの伝説、そして最高傑作「死と乙女」に秘められた愛の物語はアートファンならずとも必見。
『エゴン・シーレ 死と乙女』
1月28日公開
監督:ディーター・ベルナー
出演:ノア・サーベドラ/マレシ・リーグナー/ファレリエ・ペヒナー/ラリッサ・アイミー・ブレイドバッハ
配給:アルバトロス・フィルムBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で順次公開