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Sayo Nagase『PINK LEMONADE』

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写真家、永瀬沙世が5冊目となる写真集『PINK LEMONADE』を発表した。ハワイのワイキキ、東京郊外や都心を舞台に2年間にわたり制作されたこの作品は、永瀬が長年にわたる自身のテーマに真正面から向かったモニュメントと言える。そこに写し出された様々な“境界線”は、受け手自身の感性、感覚によっていかようにも変化し、無限の物語を紡ぐのだ。

ー『PINK LEMONADE』の写真はどれくらいの間撮りためてたんですか?

永瀬「撮影期間は2年半かな。撮影期間から写真集の制作にもかかって、合計3年くらいです」

—というと、元々写真集にする予定で撮り始めたわけではなかった?

永瀬「いつか写真集にしたいと思って全ての写真を撮ってるんだけど、こういう風に編集しよと思いながら撮ってはいなくて、『いつかのためのもの』の一つとして撮ってたから、このシリーズでいこうと決めるまでにいつも時間がかかるんです。例えば並行して10個くらいいろんなテーマで写真を撮っていたり。これに関しては結構たまったなって時に一度パブリッシャーに送ったんです。そしたら即座に『これ、本にするから』って返事がきて、1日くらいでレイアウトも組んできてくれて。その時点では抽象的な感じでしかなかったのが、3〜4千枚くらいになった時に削ぎ落とされて輪郭と核がどんどん出来てきたんです」

ー最初は抽象的だったと言うと?

永瀬「何なんだろう……。最初に送った時に既にタイトルは決まってたんですよ。タイトルが結構肝だったりするから、いつもパブリッシャーにはタイトルを付けて送るんです。だからこういう写真が撮りたいっていうのは頭にあったし、一つ一つの写真は最初の時点からわりと強かった。ただそれを本にするとなると未完成だなって」

ー一冊の本としての表現力が足りないと。

永瀬「そう。毎回そうなんだけど、最初に自分が進んで撮った写真が一番強いんです。でもそれだと強いだけで終わっちゃう。本にするとか、作品群にするために撮っていくと、すごく大きな作品になるというか、テーマになるから……」

—ああ、一番最初に撮ったものはあまりにもヴィジョンがはっきりしてるから見る側のイマジネーションがそこかしこに挟める余白みたいな部分が必要だったのかな。

永瀬「そうなんだと思う。言いたいことが前面に出すぎてて、それで完結しちゃうとお腹いっぱいになりすぎちゃうんですよね。それが客観性とか曖昧さを足して薄めていくことで、逆に濃くなって本質が浮かび上がってくるのってすごく面白いなって思います」

—うん、そのバランスはとても興味深いです。ちなみに『PINK LEMONADE』というタイトルは初期に決まっていたということだったけど、どういう意味が込められてるんですか?

永瀬「最初はすごく単純だったんです。写真はマゼンダ、イエロー、シアンっていう三原色を調整しながら色を決めていくんだけど、私は極力マゼンダとイエローしか触らないで、その2色のせめぎ合いで決めていくんですね。だから常に何かを見たときにYが多め、Mが少なめとか考えてしまっているところがあって。どうして私はこんなにもこの2色のせめぎあいをしているんだろうってすごく考えているうちに、このタイトルのイメージがなんとなく湧いてきました」

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