NeoL

開く

『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』リチャード・ロンクレイン監督インタビュー

ニューヨーク:サブ3

ーー原作はロングセラーになっていますね。読んだ感想はいかがでしたか?

ロンクレイン監督「とても素敵な話だったので気に入りました。これは絶対映画化しないといけないとすぐに思いました」

ーーどのような経緯で映画化の話になり、監督を務めることになったのですか?ルースとアレックスは原作ではユダヤ人夫婦の設定ですが、本作では白人と黒人に変更されています。なぜでしょうか?

ロンクレイン監督「最初に友人がスクリプトを読んで、それから僕が読んでとても気に入ったんです。それですぐ、『モーガン・フリーマンに僕が監督していいか、聞いていいかな?』と友人に話しました。そういうわけで僕が自分で監督をしたいと言って実現したのです。原作は黒人のユダヤ人なので、もともと黒人ではありました。オリジナルの脚本では、すでにモーガンが主演で決まっていたので、モーガンとダイアンならばより複雑な関係性、キャラクターに深みをもたせることもできるし、面白い関係性が描けると思いました。映画としては、別に異人種カップルであるということが焦点ではないのです」

ーー主演が名優モーガンとダイアンに決まった時はどんな気持ちでしたか? 意外にもモーガンとダイアンは今作が初共演でしたが、二人への演出はどのように進められていきましたか?

ロンクレイン監督「主演がモーガンに決まった時に僕はとても舞い上がりました。モーガンとダイアンも共演したことがなかったので、盛り上がっていました。彼らはお互いにファンだったので、本当に二人とできるということでエキサイティングな気持ちでしたし、私の夢もかないましたので申し分ないです。

演出に関しては、どの俳優であっても監督がどう扱うかと言えば、まずは正直さかと思います。誰に対してであっても。でも自分の確固たる意思は崩しません。結局演出は人とのつきあいですね。なんだかんだと言っても人とのつきあいになるので、人間が好きであることが大切です。私はモーガンもダイアンも好きだったので、難題があったとかこの二人だから難しいということも全くありませんでした」

ーー撮影現場での2人のやりとりの様子はいかがでしたか?

ロンクレイン監督「二人ともお互いに気付いていたのが、ブロードウェイが大好きだということ。だから現場では椅子に座ってよくデュエットで歌ってハモっていました。二人とも歌うのがすごく好きらしくてテイクの途中でも二人で歌っていました」

ーー監督から見てモーガン・フリーマンはどのような俳優だと思いますか?日本でも大変人気がありますが、彼の魅力はどんなところでしょうか?

ロンクレイン監督「モーガンは世界で一番セクシーな声の持ち主です、男性女性問わずに。彼の声は本当に素晴らしいですね。また、彼の在り様をそのままスクリーンが伝えています。誰もモーガンのことを嫌いになれない。実際に会っても誰もが好きになるんです。俳優というのは現実に会うとスクリーンとは違う人がいますよね。モーガンに関して言うと、そういうことは無くて、まさに見た通りの人です」

ーーダイアン・キートンは、いまでも日本の女性にとってファッションアイコンであり、彼女に憧れる大人の女性が多いのです。素顔のダイアンはどのような人ですか?

ロンクレイン監督「とにかく彼女はとても知的な女性です。写真や建築が大好きで、そういう分野の本も書いていますね。実のところ意外にもシャイだけどおしゃべりなんです。一対一だと本当に楽しめる素敵な人です。彼女と一緒にいることを楽しめる知的な人です」

ーーダイアンは恋多き女性としても知られています。男性はダイアンのどんなところに惹かれると思いますか?

ロンクレイン監督「若い時の彼女はとても快活な人でしたね。今までの彼女の恋愛関係では、きっと強い男性でなければ無理だと思いますね。彼女はタフな人だから。その強さも彼女の魅力だと思います。そこに男性は惹かれるのではないでしょうか」

ーードロシー役の犬は名優でしたね。動物ならではの演出の苦労やハプニング、主演二人とはどんな関係だったのか教えてください。

ロンクレイン監督「メス犬のドロシーを演じた犬は実はオスなんです。犬の演出は悪夢でした(笑)。言ったことをやってくれませんからね。怖がるシーンの撮影とか寒がる撮影があったりして、おなかを出すシーンでは震えていたので、皆同情していました。彼女(彼)の演技は効果的だったと思います。モーガンもダイアンも動物が好きなので撮影はうまくいきました。とてもかわいくて忍耐強い犬でしたよ」

ーー監督はニューヨークでの撮影が初めてということですが、ブルックリンの街や人々の魅力はどんなところだと思いますか?

ロンクレイン監督「原作では主人公の二人はマンハッタンに住んでいて、ブルックリンを見ている感じの設定でしたが、映画では逆にブルックリンの窓からマンハッタンが見えるようにしたかったんです。また、原作ではトンネルが出てきますが、それも橋の方が景色として良いので、橋に変えました。ブルックリンは今マンハッタンと同じくらい物価も物件価値も上がってきていますので、住む所としてもとても流行っています」

ーー大規模な警備体制をひかず撮影に臨まれたそうですね。トラブルなどありましか?大変だったことなどあれば教えて下さい。

ロンクレイン監督「今回の撮影で大変だと思うことはありませんでした。できるものを臨機応変にその場でやったという感じでした。ニューヨーカーは撮影に慣れていますので気にしないんです。たださすがに、モーガンとダイアンという二人を見つけたら人がやって来るでしょうし、騒ぎになってはいけないと、二人のシーンは急いで撮りました。でもニューヨークは特異な場所で、他でできないことができます」

ーー監督にとって理想の家とはどのような物件でしょうか?

ロンクレイン監督「いま私はロンドンの新しいに住んでいます。それまではヴィクトリア調のテラスハウスに住んでいたのですが、引っ越そうということになって、いまはオフィスビルのような建物です。ニューヨークなんかによくある天井がむき出しになったような雰囲気の物件で、マンションですが、1フロアが300平方くらいあるので、広くて一軒の家のような感じです。自分で作ったので理想の家に近いですね。夢に見る理想の家としては、フランスの16世紀風の田舎家なんて良いなぁと思いますね」

ーーこれから映画を観る日本の観客にメッセージをお願いします。

ロンクレイン監督「私は、この原作を知った時に、絶対に映画化しなければと思いました。年をとることは楽しいことでもあります。この映画は年を取ったら人生は終わるのみという気持ちには全然ならない、楽天的になれる映画です。結婚して良かった、これからの人生まだまだワクワクさせてくれることがあると思える映画です。若い人にとっては自分の親がどのように思っているかとか想像しながら観てもらえるのではないでしょうか。私としても文化の違ういろいろな国の方に映画を観ていただけるなんて、監督として素晴らしい経験です。日本の皆さんがどう観てくれるかとても楽しみにしています」

ニューヨーク:サブ2

ニューヨーク:サブ4

『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』

2016年1月30日、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA、109シネマズ二子玉川ほか全国順次公開

ブルックリンの街を一望できるアパートメントの最上階、画家のアレックスと愛妻ルースがこの理想的な我が家に住んで40年が経った。しかし、この建物には欠点がひとつだけあった。それは、エレベータ―が無いこと。アレックスが日課となった愛犬ドロシーとの散歩を終え、5階にある我が家への階段をようやく上り終えて帰宅すると、姪のリリーが明日の準備のためにきていた。夫の今後を心配したルースがエレベータ―のある住居へ引っ越そうとアレックスを説き伏せ、今の住まいを売ることにしたのだ。いよいよ明日が購入希望者のためのオープンハウスの日。やり手不動産エージェントのリリーは、手ぐすね引いて内覧希望者を待ち構えていた。

そんな時、ドロシーに異変が。夫妻は5番街の行きつけの動物病院へとタクシーを走らせる。ところが、車は一向に動かない。折から、マンハッタンへ渡る橋上でタンクローリーが道をふさいでいるらしい。ようやく獣医に見てもらったドロシーはヘルニアを患っており、手術が必要と言われてしまう。

翌朝、やる気満々のリリーがお客を連れてやって来た。オープンハウスは一風変わったニューヨーカーたちで大賑わい。早速いくつかのオファーが入ると同時に、獣医からドロシーの手術成功の連絡を受け取り、二人はほっと一安心。一方、いそいそと新居候補を探し始めるルースとアレックスをよそに、タンクローリー事故は一夜にしてテロ事件へと様相を変えていた。果たして、アレックスとルースの見晴らしの良い我が家は誰の手に渡るのか? 夫妻の新しい家はどうなるのだろうか? そして、アレックスとルースが最後に下した決断とは?

監督:リチャード・ロンクレイン  脚本:チャーリー・ピータース

キャスト:モーガン・フリーマン/ダイアン・キートン/シンシア・ニクソン/クレア・ヴァン・ダー・ブーム/コーリー・ジャクソンほか

2014年/アメリカ/カラー/シネマスコープ/92分 原作本:ジル・シメント『眺めのいい部屋売ります』(小学館文庫)

© 2014 Life Itself, LLC All Rights Reserved

RELATED

LATEST

Load more

TOPICS