「ジビエ」という言葉
日本でもここ数年で冬の季語とも言えるほど浸透し、肉食ブームも相まって私達の身近なところでもよく聞こえる言葉になった。
そもそもジビエとは鹿や猪、鴨、熊などの野生の鳥獣の肉で
人工的に飼育されていないものを指すのだが
牛や豚、鶏などの畜肉と違い
ハンターによる「狩猟」という手段を経て手に入るため
一般流通ルートに出回ることが少ない大変貴重な自然の恵みとも言える。
そんな貴重なジビエの中でも最高クラスの鹿肉を狩猟し解体までしている山梨県早川町のハンター望月秀樹さんを迎えて
お話を伺いながらイタリアンのアプローチで鹿を心ゆくまで味わうイベントが
先日渋谷のカウンターイタリアン&ワインバー 「SHIBUYA bed」にて行われた。
今回の「本当にあった旨い店」は特別編として、その時の模様をダイジェストで振り返りながら日本のジビエの現状と今後を考えていきたいと思う。
・鹿もも肉の炙りタルタル
酸味を立たせた味付けのもも肉を炙ることで香ばしさと旨味がまし、それをまるで森に鹿が隠れているかのように彩り鮮やかな野菜で囲んだ前菜
シャンパーニュとの相性は抜群!
・鹿レバーのフリット フレッシュトマトのソースで
まるで生チョコのようなとろっとした食感が楽しめる鹿レバーのフリットはこういう会でなければ体験できない貴重なメニューだろう。
このレバーの断面、もはや芸術である
鹿のブレインのソテー バルサミコソースで
これこそ超希少部位といえる鹿のブレイン、つまり脳みそ。
味は河豚の白子とも言える濃厚で甘くフワフワとした食感
解体の時に頭から取り出す作業が大変なのだとか
鹿のミノ、センマイ、ハチノス、ギアラのトマト煮込み パクチーソースぞえ
胃袋を何回も茹でこぼして塩でもみ洗いして臭みを取り、トマトソースで煮込んだ入魂の逸品
パクチーの爽やかさが内臓の旨味を引き立たせている
そしていよいよローストの登場
この鹿肉の断面の美しさよ
ローズピンクに染まり肉汁をしたためた質感は並大抵の女優では表現できない妖艶さを放つ
そこに塩胡椒、「SHIBUYA bed」特製のトリュフマスタードと少しのバルサミコソースで完成
・鹿もも肉のロースト
力強い旨味が噛めば噛むほどあふれだす。
蝦夷鹿よりもやはり本州鹿のほうが小柄なぶん、身のしまりもよく芳醇
ワインとのマッチングはもはや無くてはならないほど惹かれ合う存在だ。
・鹿のボロネーゼ
ミートソーススパゲティが子供のためのものならば、これはまさに大人向け
重厚な旨味と立ち上る香りの前に野生を感じる極上のシメの逸品だ。
鹿という、普段はテーブルミートではない素材ではあるが
ここまで幅広く、そして旨味を存分に味わえるのは、食用のために打ちどころを考えたハンティング、そして完璧なまでの衛生管理が行き届いた解体処理、そしてシェフの発送とスキルが合わさって初めて生まれる化学反応のおかげ。
日本のジビエの狩猟の現状としては鹿は害獣として繁殖し続け
ハンターは平均年齢が60歳を超え、後継者はどんどん減っていっている。
というのはハンティングや害獣駆除で稼いで生計を立てることはほぼ不可能と言われている。
しかも冬の雪山の中を何十キロもの銃を担いで歩きまわりながら危険と隣り合わせの狩をしなければならないなどとても商売としては割にあわないのが現実。
その上食肉として販売するためには衛生基準や冷凍加工、販売までやらねばならない、とても個人では至難の業である。
それがようやく望月秀樹さんの働きかけで早川町の自治体が動き処理施設を開設。
精力的に早川町として鹿の精肉販売を行うことになったが、やはり狩猟から解体、食肉加工まで望月さん一人にのしかかる負担は小さくない。
SHIBUYA bed
住所:東京都渋谷区道玄坂2-23-13 渋谷デリタワー2F
tel :03-3476-6120
営業時間:18:00~26:00
定休日:日曜日
予約がとれにくい場合がございます。ご了承ください。
photo by Shuya Nakano
田辺晋太郎
1978年11月5日生まれ、東京出身。2001年5月「
Life」のメンバーとしてEMIよりデビュー。