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赤い公園『猛烈リトミック』インタビュー 中編

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赤い公園のセカンド・アルバム『猛烈リトミック』では、その情報が発表されるや大きな反響を呼んだように、彼女たちが「音の先生」と慕うプロデューサー役の存在が多くの部分でとても重要な役割を果たしている。亀田誠治、蔦谷好位置、そして蓮沼執太といった当代きってのサウンド・クリエイターが、彼女たちとがっぷり四つに組むかたちでアルバムの制作に参加。これまでのセルフ・プロデュースを貫いたアプローチから一転、開放的な環境で制作されたその楽曲群は、赤い公園らしいエッジやフックを残しながらも、ポップネスに磨きがかけられ、それこそJ-POPやロックといった垣根を超える「懐の深い音楽」へと大きな飛躍を遂げた。

先行配信された“サイダー”や“NOW ON AIR”を筆頭に、シングルの“風が知ってる”や“絶対的な関係”、さらに“TOKYO HARBOR”ではフィーチャリング・ゲストとしてKREVAを迎えるなど、見事にキラーチューン揃いの内容だ。そうした背景には、バンドの作詞作曲を手がける津野米咲が近年、ご存知SMAPの“Joy!!”や南波志帆への楽曲提供を通じて創作の場を広げている影響もあるのかもしれない。その一方で、“牢屋”や“木”といった津野セルフ・プロデュースの楽曲がアルバムの中でしっかりといびつな存在感を示していて、じつに心憎い。

『猛烈リトミック』は、赤い公園による最強のポップ・アルバム? いや、最高のポップ・ミュージック・アルバムだろう。この無敵感は、なんだかとても眩しい。

 

(前編より続き)

―そこで、今回アルバムの制作に招いたプロデューサー陣に、バンドとして期待したこととは、あらためてどんなことだったんでしょうか? 長所を伸ばしてもらうとか、引き出しを開けてもらうとか、あるいは引き出し自体を作ってもらうとか、相手によってそれぞれ違うとは思うんですけど。

津野「うーんと、一貫していたのは、デモを渡す段階で、実際にスタジオでバンドのみんなと合わせてアレンジを詰めたものを一緒に送るようにしていたことですね。自分が作ったデモも、まずはギリギリまでアレンジをやってから渡すようにしようと。それは、なんというかな、“意地”みたいなもので、そうしないとカッコがつかないと思っていて。仮にも今まで自分たちでやってきたわけだし、それがどうこうっていうよりも、『メロディと歌ができました。じゃあお願いします!』って渡すのって、今まで自分たちがやってきたことに顔向けできないというか、すっごいカッコわるいと思って。で、そうやって渡すことによって、プロデューサーさんにお願いしますっていう気持ちもあるけれども、“音楽家”対“新米音楽家”で一緒に作るっていうような状況になればいいなって思って、お願いしました」

―あくまで、プロデューサーと対等な立場で作りたかった?

津野「もちろん、こちらは学ばせて頂きますって感じなんですけど――口ではそういうふうには言わないですけど(笑)、それぐらい、お願いしますって渡す音源は、デモの段階で結構もうスキがないくらいに持って行って。でもやっぱり、それでも変わってくる曲、部分ってあったし。まずは、自分たちの今まで通りのやり方でやってみて……そうじゃないと、何が自分たちに欠けているのかとか、どういう“魔法”を自分たちの音楽にかけてくれるのかとか、知ることができない。せっかくプロデューサーさんと一緒に過ごせる時間に、摩擦をかぎりなくゼロに近づけておかないと、何が起きているのかわからないままになってしまうし、それだともったいないから、そうやって渡しました」

―各プロデューサーとも、多くの時間を同じ場所で一緒に過ごした感じですか? 単にメールでデータをポイ、って感じではなく。

津野「いや、まずは自分たちでアレンジをやって、それをプロデューサーさんに渡して、データが返ってきて、それに対してあーでもないこーでもないとやって。それでまた返ってきて、で、一回リハーサル・スタジオにバンドで集まってやってみて。だから、基本的にプロデューサーさんとはすごくコミュニケーションを取りながらではありましたけど。だから、うん、いい音楽を、この人と一緒にやって、いい音楽になるといいな、っていうくらいの、すごい単純な動機です(笑)」

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