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「自分自身の身体に、抵抗の落書きを」『SUPER-KIKI SHOP』開設に込めた変革の希望
super-KIKI インタビュー




6月7日(金)に社会変革への参加を呼びかけるアパレルを取り扱うECサイト『SUPER-KIKI SHOP』がオープンする。同日から3日間は下北沢BONUSTRUCKにて展示会『PINK BOMING』も開催され、Tシャツや布パッチやステッカー、古着リメイクの販売を中心に、哲学対話やプラカードのワークショップなど様々なイベントが盛り込まれている。プロデュースするのはアーティストのsuper-KIKIと、共に運営に携わるFRAGENだ。今回どのような思いでショップをオープンさせることになったのか、服を着ることは社会変革においてどのような力を発揮するのか、super-KIKIのこれまでの生い立ちとともに伺った。



豊かな文化をつくることと社会を見ることは切り離せない



ー社会運動と服を着ること、一見繋がりがないようにも思えますが今回どうしてこういったSHOPを立ち上げることになったのでしょうか。


KIKI「2011年の原発事故をきっかけにこの国の政治ってなんかおかしいんじゃないのかな? と思い始め、勉強会やデモに参加することにしたんですよね。途中さぼったりしながら、安保法や共謀罪、与党の腐敗政治、レイシズム、辺野古埋め立て、入管法改悪などへの反対運動や、女性、クィア、トランスやセックスワーカーの権利運動などいろんなイシューのデモなどに13年ほど一市民として、時間があるときに参加してきました。ずっと見ていると、どれも根底にあるのは国家などの巨大な権力の作ったシステムの問題で、私たちの権利や自由が奪われ続けているということがわかってきたんです。そもそもこの抑圧を生んで格差を広げまくるシステム自体を批判しないと、ずっと分断させられて一番悪いことをしてるやつが勝ち続けてしまう。差別や貧困問題、紛争や虐殺など状況はどんどん悪くなっていますよね。私は自由に表現する欲望が人一倍あるからこそ、まだかろうじてある自由を守り、抑圧にあるものは解放したい。同時にこの日本社会で声を上げ続けることの難しさもずっと感じてきました。路上に出て抗議するような行動にはものすごくパワーがあるし、目に見えづらくとも歴史を変えてきたことは確か。


でも参加してること自体非難されたり関わっちゃいけないものみたいな扱いをされることも多い。そして資本主義をブン回す社会ではみんな時間もお金もないし、ゆっくり考える時間もましてやデモに参加する時間も気力もない。生産性を求められまくる社会のなか、身体の状態、精神の状態、環境の状態もさまざまで、社会を変えたくても直接的な行動に出られない人はすごくたくさんいると思うんですよね。なのでそんな中でも自分自身含め持続的に社会変革に関わる方法を、私の表現を使って作れないかとずっと試行錯誤してきました。その一つがメッセージを身にまとうアイテムです」





ー衣服としてメッセージを身につけることが持続的に社会変革と関わることなんですね。


KIKI「小さなことだとは思うんですけど人や環境によってはすごく勇気がいることだと思うし、着るっていう行為自体は何気ないものだけど、メッセージを身につけることで自分が能動的な存在になるとすごく感じていて。誰かが話しかけてきたり、見る、見られる行為がコミュニケーションになり、それを促す装置として働いているのが面白いと感じています。正直嫌な思いをすることもあると思うんですけど、この問題についてもっと話せるようになりたいと思って本を読むようになったり、思っている以上に自分自身が日常生活に社会問題を身近に引き寄せていく。違った意見を持つ人と喧嘩したりすること自体私はダメなことだと全然思っていなくて、むしろ自分も含め練習して慣れていきたい。そうして顔を合わせてお互いの思いや考えをすり合わせることが足りていないのかなと思っています。


それから、たとえ一人で身につけていたとしても、そのメッセージを自分に言い聞かせたり、お守りのように使っていると言ってくれる人もいるんです。コミュニケーションに使わなくても、今の世を生きるだけでも抵抗ですから、そのためのアイテムにもなれたらと願いを込めています。


でも実際に被差別当事者で暴力を振るわれる危険性がある人は、闘いたいから着る!という選択ももちろん支持しますが、自分の属性を曝け出すようなメッセージを無理に着る必要はないとも思っています。例えば『TRANS RIGHTS』というメッセージが描かれたプリントを当事者ではない人が着ることで、見た目では属性はわからないというメッセージを発信することができ、より抑圧されている人に降りかかる暴力を減らす実践に繋がるのでは、という思いがあります。これは希望的観測かも知れませんが」




ー現状当事者ではないと感じている人たちが着ていくことで、景色にバグを起こしていく力がありますね。


KIKI「そうですね。バグを起こしたり、境界を錯乱させるのは『SUPER-KIKI SHOP』のテーマでもあります。ダナ・ハラウェイのサイボーグフェミニズムという思想が好きで、その中に自然と機械との境界の撹乱というのがあるのですが、私は今ジェンダークィアを自認していて且つ流動性も感じていて。身体違和があまりない方だと思うんですけど、それでもおっぱいが取り外しできたらな…という願望はある。その時に身体の凹凸を隠したり変えたり、生まれ持った形とはまた別の表現方法がある程度できるのがファッションの希望だと思っていて。足りないパーツを付けたり取り替えたりっていうプラモデルみたいな感覚に近いです。なので私がファッションというジャンルにこだわりがあるのは自身の性のあり方と繋がっていると思います」


ー​​​​​​その感覚すごくわかります。この間お友達がやっている下着ブランドのローンチに行ったんですけど、その時に初めてブラジャーを買ったんです。付けることに今まで抵抗があったわけではなかったんですけど、そのブラジャーを日常で使い始めた時に今までなかったシルエットに変わって。そこに心地の良さを感じるかは人それぞれだと思うんですけど、私は心地の良さを感じたし、自分がサイボーグであるっていう感覚、確かにって思いました。


KIKI「現状のシステムに紐づけられる身動きのできない身体と、そこから解放されたい、闘いたいという確かな自分の意志が同居している、そんな複雑な私たちの在り方を肯定してくれるのが私にとってのファッションで、サイボーグフェミニズムと通じるところなんですよね」





ーなるほど。ECサイト『SUPER-KIKI SHOP』を6月7日にオープンし、同日7日、8日、9日と下北沢BONUSTRUCKにて展示会『PINK BOMBING』を開催するそうですが、こちらのコンセプトにも通じるところがありそうですね。


KIKI「ピンクはLGBTQ+、クィアの象徴のカラーでもあり、フェミニンな色としてまだ偏見を持たれているカラーでもあります。最近ではイスラエルのピンクウォッシュが問題になっていますよね。ボミングはグラフィティ用語でストリートに文字や絵を描くこと。法律や国家、資本主義などの社会システムに対して意義を申し立てる反骨精神が表現された言葉です。


自分自身この資本主義社会にがんじがらめになって社会運動をするのもしんどいし、声をあげても世間は冷笑の嵐で、それでもと思って立ち上がったなかでもハラスメントや性加害の問題で打ち砕かれてしまう。私は2019年に一度バーンアウトで鬱になって、そこからずっと低浮上なんです。でも今回特にパレスチナの解放運動のなかでクィアな人々が共鳴して連帯し、積極的に情報を発信したり抗議活動をするのを見て、あらゆる抑圧から解き放とうともがくクィアネスの力を強く感じました。クィアに対する嫌悪をぶつけられるのは辛いけど、そういう人は世の中が変わることに恐怖を感じているんだと思う。クィアにはそれだけのシステムを壊す力があるということですよね。それは今実際に降り注いでいる国家や権力者からの爆弾に対しても効果のあるボムだと思う。権力からの支配と、それに絡め取られて動けなくなっている私自身の身体にピンクのスプレーでボムし、解放を目指すという意味を込めて、展示会の名前を『PINK BOMING』にしました。クィアというのは単にアイデンティティを指す言葉ではなく、権力側が都合よく決めた画一的な性のシステムや決まりを壊して、自分達のものへとに取り戻す行為や思想を表す言葉でもあります。なので性のアイデンティティに関わらず全員が参加できる可能性のあることなんです。


ボムというと暴力的な表現に聞こえるかもしれないけど、言論や表現で闘うことをあまりにも避けすぎて社会を変えるよりも自分を変えようと自己責任論に陥っている事にも異議を唱えたいです。テロリズムを想起する人も多いと思います。私はそれを支持しないし、人の命を奪ったり奪われたりすることに対しては断固として抵抗したい。でも「テロリズム」や「テロリスト」が何から作り出されたのか、私たちは今一度考える必要がある。日本にいる私たちは、ラッキーなことにまだ言論や表現の力で闘える状況にいて、だからこそ積極的に学び、表現する必要があると思っています。


自由というのは平和のバロメーターでもあり、それはすごく脆くて壊れやすいということを歴史から学びました。平和が崩されたときに真っ先に切り落とされるのは文化と表現。だからこそ私は社会運動や表現への参加を呼びかけるし、SNSのリポストでもいいし歌ったり踊ったり、得意な方法でいいし直接的じゃなくてもいいので参加できるときは参加してみようという考えを一度持ってみてほしい。余裕がなく、生活が苦しかったり居場所がないと感じていたりで、自分や自分の周りだけを守ろうという意識が働くことは当然で、それはその人のせいじゃないと思います。でも意外と、資本主義や新自由主義、植民地主義や家父長制、ファシズムなどのシステムにたくさんの人が疑問を投げかける方が、こうした苦しい状況から解放される近道になるんじゃないかということも提案したいです」


ーアーティスト個人のデザインを売るというより、持ったり着たりすることで変革への参加を投げかけるプロジェクトなんでしょうか。


KIKI「それを目指しています。特性としては一人に篭りがちな人間なので何とかモノで関わっていたいという(笑)。まだ立ち上げたばかりで実現していないことも多いですが、作るものを通じて共同作業を呼びかけていきたいです」





ー始めたばかりだとは思いますが、今後の『SUPER-KIKI SHOP』の展望があれば教えてください。


KIKI「抑圧からの解放を目指すということですごく大きなことを言えば、資本主義を回して苦しみ続けるしかない今の現状を変えたい。それがあらゆる差別や格差を生み出し、果ては虐殺に繋がっているというのは勉強してわかってきたことです。が、どうしてもこのショップという形で資本主義の外に出ることは不可能です。なのでできることは今後何をどう批判すれば変えられるかを知るための勉強会を企画したり、知るための場を作って行くことかなと思います。大規模な生産手段が少数者の私有財産になっていること、労働力を売ることでしか働くことができず、みんなで決めることができず、社会全体を考えるよりも資産を増やすことが目的になってしまっていることなどが問題であることは少しずつわかってきたのですがまだまだ勉強も実践も足りない。そして私はものを作る欲望があり、それで何とか社会と関わることができているので、その欲望を萎縮させることはしたくない。そのためには環境や労働者の事を丁寧に考える必要があります。これも何の実績も権力もない私みたいな者がやろうとするとものすごーく大変で…透明性を担保したいと思っても、まず企業に相手してもらえなかったり、逆に全部自分の手でやろうとすると時間もお金も果てしなくかかってべらぼうに高いハイブランドになってしまう。一気に実現することは不可能なので、今は例えば労働者や環境に配慮したオーガニックコットン100%のTシャツを使ったり、リサイクルしにくい異素材混合のものを避けたり、古着のリメイクをしたりしてなるべく工夫しています。これももっと学んでアイデアを出す必要があり、より負荷の少ない方法を選択できるようにアップデートしていきたいです。アイデアや技術をお持ちの方はぜひ教えてください。


あとは社会や経済の仕組みを変えたいと思うときに、その先に希望がなければどういった社会に変えるのか、どう変えるのかを考えることはできないと思っているのですが、最近姉(宮越里子)に紹介されて左派の加速主義という思想に出会い、知り合いにレクチャーしてもらったんです。資本主義の私有財産と蓄積マシーンが贅沢さとか豊かさにむしろブレーキをかけているから、ラグジュアリーさとかキラキラ感を別の方法で作り出すことが重要という考えに、なるほど! と思って。まだ出会ったばかりで勉強中なのですが、それはSUPER-KIKIのやりたいことと相性がいいかもしれない。私の欲望とかやりたいことって、すごく真面目に社会変革に向き合ってる人からすると軽薄だと思うんです。実際とにかくかっこいいものを作りたい、楽しいことしたい、みたいなチャラい面も全然ある。そういう人間の欲望を否定したくないし大事なのはそれをどう使うかなのでは、と思い今までも活動してきました。なので豊かだと思える文化を作ることや、キラキラ感と自由を感じるものを生み出していきたいです」





ー常に実験しながら、これからの社会や文化のあり方を見つけていく、社会実験的プロジェクトの側面が大きいんですね。これまでの活動のなかで実際に豊かな文化だと感じられた体験があれば教えてください。


KIKI「2011年頃脱原発の『SAYONARA ATOM』というコレクティブの仲間と下北沢の再開発前のガード下で横断幕をみんなで作ったことがあって。仲間たちが作ったぬいぐるみを寄せ集めて作って、それをコマ撮りのアニメーションにしたんですけど、そういったものを作る行為自体がコミュニティとして成立していたなと思いました。集まった人たちで今起きているニュースやモヤモヤについてシェアできていた。抑圧されている人たちはそもそも居場所や話す場所がないことが多いけれど、こうしてみんなでものを作れば流動的な居場所も作ることができるなと最近この出来事を振り返ってよく考えます。パレスチナで起きている虐殺に対しても、最近友達が私の家に集まってみんなで大きなスイカと鍵を作ったんですけど、こうやって分断されがちな人たちを繋げる力も、社会運動やものづくりにはあると思っていて、それはとても豊かなことなんじゃないでしょうか」


ーそれはこれまでにsuper-KIKIさんが作ってきた作品やプロジェクトに通じるものですよね。緩やかだけど、同じ思いを持った人たちが繋がって、流動的なコミュニティになっていく。super-KIKIさんの活動にはそういった人を繋ぐ力があるように感じます。


KIKI「私自身、固定化されたコミュニティよりも離れたり、くっついたりできる方が心地いいです。それに私が作ったものが誰かの手に渡るということは、私なりの人と人を繋げる行為だし、連帯の気持ちを持てる方法です。そういった広い意味でのコミュニティを作るという目的でももの作りをしているのかなと、言われて思いました。家父長制の墓のデザインのバッグを持ってる人同士が電車や美術館で偶然出会って嬉しくなったという話をたまに聞くのですが、一人じゃないと思えるのもメッセージを身にまとう力の一つですね」





ー先ほど話に出た横断幕などを作るというのはデモに行くということを想定していると思うのですが、super-KIKIさんにとってものを作ることとデモを含む社会運動に参加する意義はなんですか?


KIKI「社会運動に参加していろんな境遇の人に出会って話を聞くっていうのは、自分の視野をすごく広げてくれる経験でもあるし、参加者、スピーチをする人、すれ違う人人、話しかける人、怒ってくる人を見つめることで、世の中が今どういう状況なのかということを体感として知ることができる。この『体験』は学歴もなく分厚い本も読めない私にとっては貴重なインプットです。
またアートや音楽、ゲームなど文化が響く場所はどうしたって今生きている社会なのだから文化と社会は切り離せない。私は表現の力を信じているし、その力がどういう社会でどう作用するのか、どう使うのかを見る必要があると思っています。そうしないと新自由主義や資本主義にすぐ回収されてしまうので。
なので豊かな文化を作ることと社会運動に参加して社会を見ることは私にとっては切り離せないことだと思っています。もちろん社会を見る方法はそれぞれのやり方があるので、あくまでも自分の例ですが」





雑誌文化が“変”な自分を肯定し、
絵を描くことが自分と人を繋いでくれた



ーありがとうございます。ここからはそんなsuper-KIKIさんがどういうふうに現在に至るのかライフヒストリーを知りたいのですが、幼少期はどのような子どもでしたか?



KIKI「川崎の産業道路の近くの市営住宅で暮らしていました。日雇い労働者の街でもあったので、比較的貧困家庭の多い地域でした。近くにコリアンタウンもあるところです。小さい頃から絵を描くのが好きで、父が仕事で使っていた大きいホワイトボードにネズミの巣の断面図などを描いていました(笑)。両親は親バカで『天才だ!!』とまつり挙げてましたね。小学生の頃は友達は性別関係なく多い方でしたが、趣味はお絵描きとリコーダーで、自己主張の激しい根暗でした。男子のガキ大将的な子とよく喧嘩していました」


ー当時は何に怒って喧嘩をしていたんですか?


KIKI「私は空気を読まず正義感を振りかざすタイプだったんです。高学年の頃だったかな、その男子が喧嘩の最後に捨て台詞で『ブス!』と吐いて、周りの男子もそのワードを出せば私を叩きのめせると感じたのか、連呼し始めて。その時にはじめて『自分は女で、ブスだと思われることは屈辱的で罪なんだ』と意識したのを覚えています。それまではみんな性別や容姿のことなんか気にしてなかったと思ってたのに、そのあたりからなんとなく属性でグループが分かれていき、中学に入ると上下関係も加わり、私はどうやら笑われたり変だと思われる存在なんだと気付いて、そこからは周りに自分のことを理解してもらうことを諦めていたように思います」





ーそうした葛藤とはどのように向き合ったり、乗り越えていきましたか?


KIKI「美術の授業や文化祭の掲示物、体育祭の垂れ幕をみんなから褒めてもらえて、絵を描けばみんなに認められるんだと思い、絵を描くことにスキルを全振りしていました。なので当時は、一生絵を描き続けられれば私は幸せだなとも思えていたので、暗いながらも絶望はしていなかったです。


それと当時は『Zipper』や『CUTiE』などの個性派カルチャー雑誌も流行っていて、同じく根暗でお金持ちの友達の家でそういう雑誌を見せてもらっていました。ファッションの自由さや『CUTiE Comic』で描かれていた岡崎京子や南Q太などの作品の中に今思えばクィアなキャラクターがいっぱい登場していて、そこに憧れを感じられたのも大きかったと思います。そこからファッションに興味を持ち始めて、川崎のマルイに『HYSTERIC GLAMOUR』など派手系のブランドをこっそり見にいっていました。中学3年生のクリスマスにはずっと欲しかったどピンクの豹柄パーカーを買ってもらって、無敵だと感じましたね」


ー絵を描くこと、雑誌カルチャーがsuper-KIKIさんを肯定し、人と繋げてくれていたんですね。高校時代はどうでしたか?


KIKI「工業高校のデザイン科に進学して、その高校には変な人が当たり前にいっぱいいたんです。その人たちと出会えたことで、段々と「変でもいいのでは?」と思うようになっていき、自己主張の強さを取り戻していきました。なので進学に有利だからと生徒会を運営する雰囲気や、校則の理不尽さにワンパンチを入れたいという動機で、学力がゼロに近かったのに生徒会長に立候補しました。人気だった先輩の応援演説で虎の威を借り、もう一人の立候補者に圧の強い交渉をして当選。文化祭を生徒主体で開催する仕組みに変えたり、全く機能していなかった制服を変える委員会に参加したりで、私が卒業したあとですが制服を変えることに成功したりしました。今思うと社会運動と近いことをしてますね(笑)」





ー当時から反骨精神をアクションに変えていたんですね。理不尽なことがあったときや、漠然とした疑問や思いが生まれたときに、改革を求めて闘ったり、表現することを選択できた原動力って何だったと思いますか?


KIKI「今思うと母はゆるふわなフェミニストで、両親ともに「他人にどう思われても自分がやりたいことを貫く」スタイルでした。声をあげたり、自分の意思を貫く精神は無意識に培われてきた部分はあると思います。


高校でも空気を読まずに意見を言ったりする人は意外といなくて、頭髪検査で先生に囲まれて説教されたときに、泣きながらブチギレてたのは私ぐらいでしたね(笑)。中学時代に認めてもらうということを一度諦めているのもあって、自分のやりたいことをやろうというポジティブさ半分、自暴自棄半分みたいな感じだったのかも。そうできていたのは家族との関係がある程度うまくいっていて、家族がそういう私を否定しなかったこと、そして絵を描くことが認められていたからで、恵まれていましたね」


ー最後に、super-KIKIさん個人としてどのようなビジョンを描いているのか教えてください。


KIKI「自分が心地いいと思える流動的な共同体を作りながら声を消されないための持続的な変革の方法を探り、表現の方法についても同化を求めるのではなく新しい可能性を求めてどんどんバグやノイズを生み出していきたいですね。また、家族に限らずとも身近な存在がフェミニストであったり、自分の存在を否定せずにいてくれたことはとても大きなことだったなと感じます。私は今のところ国家が想定している『家族』を持つことは考えていないですが、私も身近な人にとってそうありたいし、社会変革へのバトンは引き継いで次の世代へ渡せるような存在になりたいと思っています」





interviewer Kotetsu Nakazato(https://www.instagram.com/kotetsunakazato/
Image photo Kohey Kanno


<プロフィール>
super-KIKI
2011年より路上デモに参加しながら社会に対する疑問やメッセージを、ぬいぐるみでできた横断幕やネオンサイン風ステンシルのプラカード、衣服などをDIYで制作し表現する。フェミニストゲーマーのミーティングや、政治的メッセージを刷るシルクスクリーンワークショップなども展開。自身のケアと性表現の探求からinstagramでセルフィーの投稿もする。バーンアウトの経験から、日常的にいかに無理しない形で持続的に声をあげられるかを模索し、身に付けられる政治的アイテムを日々制作中。


株式会社FRAGEN
社会のなかで、問い、行動しつづけるために、みなさんと伴走するための存在。Webキャンペーンや広報、ブランディング、イベントコーディネートが得意。主な活動フィールドは、政治、アクティビズム、カルチャー。D2021運営。映画『重力の光』配給/制作。上映会や読書会、勉強会や音楽パーティなども主宰している。
Reina Tashiro / Mizuki Kimura



super-KIKI 政治的衣服 POP UP “𝑷𝑰𝑵𝑲 𝑩𝑶𝑴𝑩𝑰𝑵𝑮”

【日時】2024年6月7日, 8日, 9日
11:00-21:00(最終日のみ11:30-22:00)
【場所】下北沢 BONUS TRACK ギャラリー

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