デザイナー木村由佳が自身のブランド「mukcyen」をスタート。
木村は日本生まれ中国育ち、文化服装学院を卒業後、デザイナーズブランドの企画部に4年間在籍した経歴を持つ。
「mukcyen」とはデザイナーの苗字の中国語「mù cūn」を元にした造語。
抽象的で無意味なこの言葉には、自らが築く歴史と文化を附与することで、無類の意を与えていく実直な思いが込められている。
ファーストコレクションとなる2024AWのテーマは「荒蕪 ;rugged」。
以下、ステイトメント。
外観を残した実質的な意味は無に向かい、起伏に回帰する。
デザイナー自身の生き写しでもあるmukcyenのファーストコレクションで、意識から感覚へ、感情から虚無へ、そして騒めきへ、それら有と無の連続性を切り取りました。
育み、営み、養う。失う、無くす、落とす。有無相生に纏わる循環とその過程は、ブランドに無類の意を与えていくための、はじまりに過ぎません。
それらがシンボライズされている木乃伊は、所産を誘発させる大いなる誘因となったと彼女は語ります。
「亡くなった人が蘇生するために身体をこの世に遺す。ひと巡りしていく、その様も人生ではないでしょうか」。
原形を残した乾いた肌、虚構にも映る面構えは、ざらついた質感のベージュ色、ヴィンテージサテンのキャミソール、ショルダーパットが強調されたロングスリーブ、ストレッチを効かせたペチコートのセットアップという文体にも現れています。
他方、木乃伊の伴侶という人物像にも眼を凝らします。
「コレクションの物語における連れ立つ人物は、その立場を渇望していたのです。失った哀しみに暮れながら、自由も手にしたい。
相反する感情を同時に抱えることに対して他者が断罪することはできません。寧ろ私は肯定したい」。
柔らかいストレッチ地の変型ベレー帽、ジャージ素材のナロードレス、そしてオーガンジーのコルセットに身を包み、青白い肌と決心付いた眼差しで言語-現実と自我を繋ぐ唯一の結実-を絶しているかのようでもあります。
朝焼けを浴び、日盛りに眩み、夕暮れを徘徊する。
時間軸の流動性を掻乱すことで、四季や気候、温度を越え、人に着せる衣服ではなく、被服が人と触れ合う瞬間
-それはシルエットに対して大きな影響を及ぼす程の- を型取る。
その傍らで、澄み切った青空、果てしない海原、久遠に続く地平、無機質なコンクリート、抽象的な螺旋の構造体といった景観と隔絶されながら、なんとか日常と結び付こうとする人たちの複雑性に愛しい気持ちが溢れるのです。
https://www.instagram.com/mukcyen?igsh=c2Z0cXNiYzMybXNy