ウィーン・ミュージアム・カールスプラッツ本館© Kollektiv Fischka
ウィーン市観光局が2024年に向けて、主要な文化関連トピックスを発表した。
①【ウィーン・ミュージアム・カールスプラッツ本館】リニューアルオープン&常設展を無料公開
ウィーン市史を網羅する市立博物館【ウィーン・ミュージアム・カールスプラッツ本館】が、3年間の大規模改修工事を経て、2023年12月6日にリニューアルオープン。この改修工事により正味床面積は約2倍に拡張し、カフェやレストラン、休憩スペースといった一般開放エリアも拡大。
ウィーン・ミュージアムはこれを機に、オーストリア初の試みとなる、常設展の無料公開を導入。内容を一新した常設展『ウィーン・私の歴史』では、新石器時代から現代までのウィーンの歴史を物語る約1,700点の展示品を、3フロア・3,300平方メートルにわたって紹介している。ウィーン市は、常設展の無料公開によって、多くの市民や観光客がより気軽に歴史文化に親しむことができる。
1959年完成の既存の建物の上に新設された4階、通称「フローティング・フロア」は特別展会場として利用される。2024年は2つの特別展が予定されている(項目③参照)。
ハウス・オブ・シュトラウス© WienTourismus/Gregor Hofbauer
② シュトラウス一家にまつわる複合施設【ハウス・オブ・シュトラウス】グランド・オープン
毎年元日に生中継されるウィーン・フィルのニューイヤーコンサートでもおなじみの作曲家、シュトラウス一家。そのゆかりの場所が、「ワルツ王」ヨハン・シュトラウス2世の198歳の誕生日である2023年10月25日に、多目的施設『ハウス・オブ・シュトラウス』として新たにオープン。
建物は1837年ツォーゲルニッツ・ガーデンパレスとして建てられ、当時のウィーンの上流階級の社交場だった。シュトラウス一家はもちろんのこと、カール・ミヒャエル・ツィーラー、ヨーゼフ・ランナーらが舞踏会で演奏した。
『ハウス・オブ・シュトラウス』は、シュトラウス一家が活躍した19世紀のウィーン社交界の世界を垣間見られる記念館を中心に、2024年より定期コンサートが予定されている音楽ホールやレストランが設けられている。また、シュトラウス一家の子孫であるエドゥアルド・シュトラウス氏が率いるウィーン・シュトラウス研究所が置かれているほか、マスタークラスを開催して世界中から集まった若き才能を指導している。
なお、2024年はヨハン・シュトラウス2世のオペレッタ『こうもり』の初演から150周年、2025年はヨハン・シュトラウス2世の生誕200周年を迎える。
『小さな自画像』レンブラント・ファン・レイン © KHM-Museumsverband
③ 2024年ウィーンで予定されている主な特別展
■『ヨハン・ベルンハルト・フィッシャー・フォン・エルラッハ』展
ウィーン・ミュージアム・カールスプラッツ本館/2024年2月1日~4月28日
改装オープン後、初となる特別展では、18世紀に活躍したハプスブルク宮廷建築家ヨハン・ベルンハルト・フィッシャー・フォン・エルラッハ(1656-1723)を取り上げる。博物館に隣接するカール教会をはじめ、シェーンブルン宮殿、オーストリア国立図書館など、ウィーンを代表するバロック建築物を次々と手掛けた。
■『分離派:クリムト、シュトゥック、
リーバーマン』展
ウィーン・ミュージアム・カールスプラッツ本館/2024年5月23日~10月13日
1900年前後に展開された分離派(セセッション)運動。本展では3都市でそれぞれ運動を牽引した3人の芸術家、グスタフ・クリムト(ウィーン)、フランツ・フォン・シュトゥック(ミュンヘン)、マックス・リーバーマン(ベルリン)に焦点を当てる。
■『レンブラント:ホーホストラーテンの色彩と幻想』展
ウィーン美術史博物館/ 2024年10月8日~2025年1月12日
ウィーン美術史博物館初となるレンブラント・ファン・レイン(1606-1669)の大規模特別展。レンブラントと、その弟子でありウィーン宮廷で才能を開花させたサミュエル・ファン・ホーホストラーテン(1627-1678)の絵画と素描50点が展示される。
■『シャガール』展
アルベルティーナ美術館/2024年9月28日~2025年2月9日
ロシア・アヴァンギャルドの巨匠マルク・シャガール(1887-1985)。約90点の作品で構成され、第二次世界大戦とホロコーストの恐怖を描いた画家の晩年に焦点を当てる。
■『多様性の美』展
アルベルティーナ・モダン美術館/2024年2月17日~8月18日
アルベルティーナ美術館は300年近くにわたって白人男性による作品を購入、収集、展示してきたが、21世紀に入ってからの20年間の活動はこの慣習を打ち砕くものだった。現代の多様性、アイデンティティや芸術形態、素材やジェンダーの多様性に捧げる本展は、ジャン=ミシェル・バスキア、アレクサンドル・ディオップ、VALIE EXPORT、エヴァ・ベレシンらによる作品を展示する。
■『WE ❤』展
ハイディ・ホルテン・コレクション/2023年11月24日~2024年8月25日
コロナ禍中の2022年に開館した美術館。本展では表現主義、1960年代と1970年代の芸術、図像と抽象の緊張関係の中での絵画と彫刻という3つのテーマに焦点を当てる。来場者は好きな作品に投票でき、選ばれた作品は新しい常設展に並ぶことになる。クリムトの絵画作品『アッター湖畔のウンターラッハの教会』が、「フォーカス」と題されたキャビネット展示として並列展示される。
■『クリマ・ビエンナーレ・ウィーン』展
クンスト・ハウス・ウィーン他/2024年4月5日~7月14日
このたび新たに100日間にわたって開催されるビエンナーレがテーマに掲げるのは、アートと環境問題。ウィーン市内のさまざまな機関が参加し、気候危機への対応を多彩な方法で提示する。環境との共生を目指した芸術家・建築家として日本でも人気の高いフンデルトヴァッサーが自ら設立した美術館「クンスト・ハウス・ウィーン(2024年1月31日まで改装工事中)」がメイン会場となる。