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text by nao machida
photo by Marisa Suda

イアン・ディオール来日インタビュー/Interview with iann dior in Japan




10代の頃にネットにアップした音源がプロデューサー集団インターネット・マネーの耳に留まり、2019年にデビューを果たしたラッパー/シンガーのイアン・ディオール。プエルトリコ出身テキサス育ちで、現在はロサンゼルスを拠点に活動する23歳は、2020年に24kGoldnとのコラボレーション「Mood」がバイラルヒットしたことをきっかけにブレイクし、翌年にはXXL FRESHMAN CLASSや米「フォーブズ」誌の30 UNDER 30に選出された。また、2022年には、トラヴィス・バーカーやマシン・ガン・ケリーら豪華アーティストやプロデューサーを迎えたセカンドアルバム『on to better things』と、K-POPグループTOMORROW X TOGETHERとコラボレーションした「Valley of Lies」を発表するなど、多彩な活動を展開している。ここでは、1月に開催されたライブイベント「GMO SONIC」のために、待望の初来日を果たした彼に話を聞いた。 


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――日本へようこそ。今回が初来日ですか?


イアン・ディオール「ありがとう、すごく興奮しているんだ。移住したいくらいだよ(笑)」


――日本のファンも、ついにライブが観られることを楽しみにしていると思います。


イアン・ディオール「とても楽しみだよ。考えただけで鳥肌が立つくらいにね。とにかくこの体験にどっぷり浸ろうと思っている」


――まずは少しバックグラウンドについてお聞かせいただきたいのですが、出身はどちらですか?


イアン・ディオール「プエルトリコ出身で、5、6歳まで住んでいた。父親が海軍に所属していたので、我が家は引っ越しが多かったんだ。プエルトリコからテキサス、フロリア、バージニア、そして再びテキサスへと移って、今はLAに住んでいる」





――音楽に興味を持ったきっかけは? 子どもの頃から音楽好きだったんですか?


イアン・ディオール「どちらかというと詩が好きで、あとはただ好きなアーティストを聴いていたように思う。音楽は音楽そのものが好きだったんだ。ある時、曲の中で物語を伝えられるのだとわかって、そこからどんどん夢中になっていった」


――どんな音楽を聴いて育ったのですか?


イアン・ディオール「母親はスペイン語の音楽をよく聴いていた。マーク・アンソニーとか、彼のようなタイプのアーティストの曲をね。父親はジェイ・Zやナズなどニューヨークのラップミュージックをよく聴いていたから、その両方のブレンドを聴いて育った。それから年齢を重ねるにつれて、自分が気に入ったものも聴くようになっていったんだ。J. コールを聴いたり、初期のカニエにも大きな影響を受けた。それに新進気鋭のアーティストたちも。2016年くらいだと、ウージー(リル・ウージー・ヴァート)やジュース(・ワールド)、カーディ(・B)とか。そんな感じで、いろんな音楽を聴いていた」




――なぜ曲作りを始めたのですか?


イアン・ディオール「ただ自己表現の手段が欲しくて、常に耳を傾けてもらいたかったから。自分のストーリーを伝えるためのアイデアに過ぎなかったんだけど、誰かがその曲を聴いて共感し、孤独ではないのだと感じてくれたことが本当にうれしかった。だから、自分の声を世の中に出して聴いてもらうためには何でもしたいと思ったんだ」  


――2019年にSoundCloudで曲を発表し始めて、いろんなことがすごい速さで起こったわけですよね。


イアン・ディオール「最初は『A Dance with the Devil』というEPを作ったんだけど、それを聴いたプロデューサー集団(インターネット・マネー)から連絡があって、LAに行くことになった。そこから2曲だけ発表したら、2曲目がすごいことになって。それをきっかけにいろんなレーベルと会うことになり、人生が変わったんだ。インスタグラムでDMをもらって、『君をLAに呼びたいんだ。いつまでこちらに滞在することになるかわからないけど、とにかく荷造りして』と言われて。それで荷物を詰めて、テキサスを去って、二度と帰ることはなかった」





――日本では2020年に発表された24kGoldnとのコラボレーション「Mood」をきっかけに、あなたのことを知った人が多いのではないかと思います。あの曲はTikTokでバズって世界中のチャートにランクインしましたが、あなたにとってはどのような経験でしたか?


イアン・ディオール「自分にとっては、その経験自体と人々と繋がれたことがうれしかった。よく一位を取ってプレッシャーを感じるかと聞かれたんだけど、そんなことはなくて。結局のところ、僕は音楽を作るために、ここにいるわけだからね。それが自分の仕事であり、後のことは心配していない。一位になった夜も、『気晴らしに遊びに行くのではなく、仕事をしよう』とスタジオに直行したよ。でも、日が経つにつれて実感が湧いてきて圧倒されたんだ」


――昨年はセカンドアルバム『on to better things』をリリースされました。


イアン・ディオール「僕にとっては、よりパーソナルなアルバムなんだ。ファーストアルバムでは伝えられなかったストーリーを伝えたかった。だから、それぞれの曲は自分が悩んだり、うれしかったりしたときの記憶なんだ。こんなにいろんなことがあると複雑な感情を抱くこともあるし、人生が現実のものだと感じられないときもある。だからこそ、そういった気持ちをすべて曲に詰め込んで、また同じような気分になったときに振り返ることができるようにしたかった。それにファンのためにもね。僕らはまったく異なる2つの人生を生きているわけだけど、みんなが同じような悩みを抱えているから、共感することができる。それは僕にとってうれしいことなんだ」





――アルバムの中でお気に入りの曲は?


イアン・ディオール「『obvious』は好きな曲の一つなんだ。一文字も書かずにスタジオ入りして、自分の感情を吐き出した曲だから。怒りや悲しみをすべて吐き出すことができて、とてもいい気分だったし、あらゆる感情を頭の中でまとめて曲に詰め込むことができた。あの瞬間の僕の気持ちそのものなんだよ。そういう曲は永遠に忘れられないんだ」





――さまざまなジャンルや国のプロデューサーやアーティストとコラボレーションされていますが、コラボレーターを選ぶ基準は?


イアン・ディオール「相手の音楽から得られるフィーリングで決めている。もし自分が耳にしたものや、その美学など、曲に関するすべてを気に入ることができたら、ぜひコラボレーションしてお互いの世界を一つにしたいと思う。大物だから一緒にやろう、とは決して思わない。それよりも、君の仕事が好きだから一緒に何かしようよ、という感じなんだ」


――昨年はK-POPのグループTOMORROW X TOGETHERと「Valley of Lies」でコラボレーションしていましたが、どのように実現したのですか?


イアン・ディオール「前作のプロデューサーの一人だったアンドリュー・ルースが彼らと仕事をしていたときに、僕とつながりたがっていると連絡してくれた。それで彼らが気に入りそうな曲をいくつか送ったら、『Valley of Lies』が選ばれたんだ。2年ほど前にレコーディングした曲だったから、ようやく日の目を見ることができて、彼らにもあんなに気に入ってもらえて良かったよ」


――実際に会うことはできましたか?


イアン・ディオール「一緒に2回ライブしたんだ。LAに来たときに彼らのライブに出たのと、ロラパルーザでも共演した。素晴らしかったよ。僕と彼らのファン層は全然違うから、まったく違った雰囲気を体験できて良かった。彼らのファンはとても礼儀正しいんだよね。僕のファンは熱狂的で、シャツを脱いだり、大騒ぎしたり、木に飛び込んだりするんだけど(笑)」





――今年はニューアルバムを予定されているそうですが、現時点で何かシェアできる情報はありますか?


イアン・ディオール「僕らはできる限りたくさんの音楽を作るべく集中している。しばらくの間、音楽が仕事のように感じてしまっていた時期があったんだ。そして、今は再び音楽に夢中になっている。ニューヨークにも行きたいし、LAでは新しい仕事場を探す予定。マイアミにも行きたいと思っていて、そこでアルバムの残りを仕上げる計画だ。もう2ヶ月ほど作業しているけど、たくさんの曲ができている。ファンの反応を見るのが楽しみだよ」


――ニューアルバムのプロデューサーは?


イアン・ディオール「アルバムの大半はインターネット・マネーと手がける予定。LAに最初に来たときから一緒にやっている人たちだからね。また彼らとスタジオ入りできてうれしいし、やりやすいんだ。でも、外の人たちとも絶対に一緒に仕事をしたいと思っていて、僕らの作品に彼らを招き入れたいと思っている。全体を通してまとまりが感じられるようにね」


――今後はアーティストとして、そして一人の人間として、どのように成長していきたいですか?


イアン・ディオール「とにかく自分の夢に集中するだけだと思う。それが一番大切なことなんだ。僕が音楽より他の何かを優先することは絶対にない。音楽は僕と一緒に成長していくだろうし、僕は自分の音楽と一緒に進化するんだ」





photography Marisa Suda (IG)
text nao machida



Iann Dior
New Single「do it all」
Now On Sale
https://virginmusic.lnk.to/doitall
新曲「do it all」は、より良い人間になるために自身の欠陥を認める様を描いた楽曲で、「Lemonade」が大ヒットしたプロデューサー・コレクティヴのInternet Moneyがプロデュースを手掛けている。イアンは、「この曲の背景には誰かのために自身を成長させるために努めることを歌っているんだ。俺達は完璧になれることはない分、他人の期待にそえることが出来ないでもがくことがある。そんな状態を自分なりに表現した曲なんだ。また、ファンのために、かつて自分がSoundCloudにアップロードしていた時代のHIP HOPのルーツに戻りながら、同時に幅広いサウンドを追求し続けていることを示したかったんだ」とコメントしている。



Iann Dior
1999年3月プエルトリコ生まれ、テキサス育ち。高校生の時に、友達から楽曲を作って欲しいと頼まれたことがきっかけで楽曲制作をしてはアップロードすると、口コミで広がり、Internet Moneyの創設者のTaz Taylorの耳に届く。LAへ渡ってはJuice WRLDやXXXTENTACIONの作品を手掛けたプロデューサーのNick Miraと「Cutthroat」のシングルを2019年2月にリリースすると、SoundCloud上で1,300万ストリーミングを達成し、メロディアスなlo-fi HIP HOPアーティストとして確立していく。2019年4月にはTrippie Reddや 6IX9NEなどが所属する10K Projectsと契約し、デビュー・アルバム『Industry Plant』をリリース。翌年には24kゴールデンと共演した「Mood」が大ヒットし、米ビルボード・チャートで累計8週に渡り1位を獲得することで、一気に知名度を上げる。また、ファッションアイコンとしても人気があり、2022年のMCM春夏ラインのアイコン、その他MarniやTommy Hilfigerなどともコラボしている。
日本公式アーティストホームページ:https://carolineinternational.jp/iann-dior/

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