草間彌生『草間の自己消滅』
Date:1967
Medium:16 mm color film transferred to video Length:23 min. 33 sec.
Starring and directed by Yayoi Kusama Cinematography by Jud Yalkut
Copyright of YAYOI KUSAMA Courtesy of Ota Fine Arts
荒川修作『Why Not』
©2017 Estate of Madeline Gins. Reproduced with the permission of the Estate of Madeline Gins and Reversible Destiny Foundation
Photo courtesy of Arakawa + Gins Tokyo office
5月13日(金)より表参道のGYRE GALLERYにて、『世界の終わりと環境世界』展を開催。
本展企画者 飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長)によるステイトメントは以下。
核の脅威と地政学的緊張、環境破壊と地球温暖化──〈世界の終わり〉は、いまや宗教的預言でも科学的予測でもなく、今ここにあり身体的に知覚され経験されるカテゴリーである。〈世界の終わり〉まで生き延びるためではなく、〈世界の終わり〉とともに生きるために、政治的なもの、社会的なもの、人間的なものの交差する地点にあらわれる破局的主題と対峙し、近代の諸概念を根源的に問い直す展覧会となる。〈世界の終わり〉は、「人間中心主義」の終焉とも言える。すべての動物はそれぞれに種特有の知覚世界をもって生きており、その主体として行動しているという考えである。ヤーコブ・フォン・ユクスキュル(註)によれば、普遍的な時間や空間(Umgebung、「環境」)も、動物主体にとってはそれぞれ独自の時間・空間として知覚されている。動物の行動は各動物で異なる知覚と作用の結果であり、それぞれに動物に特有の意味をもってなされる。ユクスキュルは、動物主体と客体との意味を持った相互関係を自然の 生命計画」と名づけて、これらの研究の深化を呼びかけた。
本展覧会では、「人間中心主義」からの離脱し我々がすべて異なる「環境世界」に生きていることへの認識に到達できるのかを問い掛けていくものである。
(註)ヤーコプ・フォン・ユクスキュル(1864〜1944)は、ドイツの生物学者である。生物学の概念として環世界(かんせかい、Umwelt)(=環境世界)を 提唱した。環境世界とも訳される。生物学的主体によって構築された独自の世界のことを「環世界:かんせかい=Umwelt:ウンベルト」と名付けた。客観 的な環境ではなく、主体が知覚でき、働きかけることができる環境(環世界)こそ、主体にとっての現実、生きる舞台なのである。
アニッシュ・カプーア『1000 names』
制作年:1979-80 材質:mixed media
Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE
大小島真木『ウェヌス Venus』
制作年: 2020 材質: 革、鉄、プロジェクション投影、造花 Size: w 70x h 160x d 50 cm
Photo by Shin Ashikaga
加茂昂『ゾーン#5』
制作年:2013 材質:油彩、キャンバス サイズ:1940×1620mm
AKI INOMATA『ギャラップする南部馬』
制作年:2019 4K video(loop) monochrome print
AKI INOMATA courtesy of Maho Kubota Gallery
タイトル:Entropie I
リア・ジロー『Entropie I』
制作年:2015年 ガラス版にプリント 35×60cm
©Lia Giraud, Entropie I, 2015
『世界の終わりと環境世界』展
■会期:2022年5月13日 (金) -7月3日 (日)
主催:GYRE / スクールデレック芸術社会学研究所
会場:GYRE GALLERY 東京都渋谷区神宮前 5-10-1 GYRE 3F Tel.03-3498-6990
出展作家
草間彌生、荒川修作、アニッシュ・カプーア、AKI INOMATA、加茂昂、大小島真木、リア・ジロー
Copyright of YAYOI KUSAMA
Courtesy of Ota Fine Arts
草間彌生 (Yayoi Kusama)
1929年長野県松本市生まれ。幼少より水玉と網目を用いた幻想的な絵画を制作。1957年単身渡米、前衛芸術家としての地位を 築く。草間は1960年代から1970年代初頭のニューヨークアート・シーンから美術家としての名声を高め始めた。1973年活動拠点を東京に移す。再評価される契機になったのは1989年にニューヨークの国際現代美術センターで開催された 『草間彌生回顧展』である。1993年ヴェネツィア・ビエンナーレで日本館にて現代美術家として初の個展。その後、1998年に ニューヨーク近代美術館で開催された回顧展『ラブ・フォーエバー:草間 彌生 1958〜1968』は、草間の再ブレイクに拍車をかけた。2001年朝日賞。2009年文化功労者、「わが永遠の魂」シリーズ制作開始。2011年テート・モダン、ポンピドゥ・ センターなど欧米4都市巡回展開始。2012年国内10都市巡回展開始。2013年中南米、アジア巡回展開始。2014年世界で最も人気のあるアーティスト(『アート・ニュースペーパー』紙)。2015年北欧各国での巡回展開始。2016年世界で最も影響力がある100人(『タイム』誌)。2016年文化勲章受章。2017年草間彌生美術館開館、東南アジア巡回展開始。 2021年ニューヨークボタニカルガーデンで個展開催、グロピウス・バウで開かれた個展が、2022年テルアビブ美術館へ巡回。
Photo courtesy of Arakawa + Gins Tokyo office
荒川修作(Shusaku Arakawa)
1936年愛知県生まれ。愛知県立旭丘高等学校美術過程卒業後、武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)を中退。1960年に吉村益信、篠原有司男、赤瀬川原平と前衛芸術グループ「ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ」を結成し、「反芸術」の実践を行う。同年9月に「もうひとつの墓場」と題した初個展を東京の村松画廊で開催。柩を思わせる木箱とセメントの塊が用いられた立体作品、「棺桶」シリーズを発表した。61年よりニューヨークに拠点を移し、詩人のマドリン・ギンズとともに活動をスタート。シルエットや矢印線、写真、色のグラデーションなどのモチーフを複合的に用いて絵画化した「ダイヤグラム (図式)」シリーズなどを経て、70年に行われた第35回ヴェネチア・ビエンナーレでは、言葉がイメージや物のシンボルとしてだけでなく、ほかの記号・かたちと並列的に自律して描かれた「意味のメカニズム」シリーズを出品。1972年、同作のドイツでの巡回展示を見た物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルクから賞賛され、ギンズとともにマックス・プランク研究所に 招待をうける。また同年、ミュンヘンオリンピックのポスターをデザインした。1982年、紺綬褒章受章、1986年フランス文芸 シュヴァリエ勲章受章、2003年紫綬褒章受章など内外でその活躍が認められている。1997年グッゲンハイム美術館で日本人としては初の個展を開催している。2010年没。
Photo by Gautier Deblonde
Courtesy of SCAI THE BATHHOUSE
アニッシュ・カプーア (Anish Kapoor)
1954年インド、ムンバイ生まれ。1970年代に渡英し、現在は英国を代表する彫刻家として国際的に高い評価を得ている。1990年のヴェニス・ビエンナーレ英国館での個展、同年のターナー賞受賞、1992年ドクメンタ出展等を始め、主要な国際展への参加や欧米の美術館での個展を開催してきた。2022年にはヴェネチアにて2つの個展の開催が予定されている。 アニッシュ・カプーアの作品は、神話や哲学から派生する独特の世界観によって形作られており、作品の存在する空間 そのものを異空間へと変換してしまうのが特徴的。現実と非現実の両方を併せ持つかのような作品は、宇宙的な観念や、神秘性、官能性を強く感じさせる表現となっている。現代美術の主流となっている欧米的な価値観の域を超えた、東洋的な思想に基づくカプーアの作品の独自性は、強く人々の心をとらえると同時に、鑑賞する誰もが作品に入り込める、視覚的な喜びや作品体験を純粋に楽しめる親しみ易さを持っている。
Photo by Hiroshi Wada
AKI INOMATA
1983年生まれ。2008年東京藝術大学大学院 先端芸術表現専攻修了。2017年ACCのグランティとしてニューヨークに滞在。東京在住。生きものとの関わりから生まれるもの、あるいはその関係性を提示している。ナント美術館、十和田市現代美術館、北九州市立美術館での個展のほか、2021年「Broken Nature」ニューヨーク近代美術館、 2021年「The World Began Without Human Race, and It Will End Without It.」国立台湾美術館、 2019年「第22回ミラノ・トリエンナーレ」、2018年「タイビエンナーレ」など国内外で展示。2020年「AKI INOMATA: Significant Otherness 生きものと私が出会うとき」(美術出版社)を刊行。 主な収蔵先に、ニューヨーク近代美術館、南オーストラリア州立美術館、北九州市立美術館など。
加茂昂 (Akira Kamo)
1982年東京生まれ。2010年東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。 3.11後、「絵画」と「生き延びる」ことを同義に捉え、心象と事象を織り交ぜながら「私」と「社会」が相対的に立ち現われるような絵画作品を制作する。 近年は、福島を始め、広島、水俣など、日本が抱えてきた甚大な災禍を作品のテーマに据える。主な個展に個展「境界線を吹き抜ける風」LOKO gallery 2019、「追体験の光景」原爆の図丸木美術館 2018、「その光景の肖像」つなぎ美術館 2017、「風景と肖像のあいだ」island japan 2017、「追体験の絵画」広島芸術センター2017 「【絵画】と【生き延びる】」island MEDIUM 2012など。主なグループ展に「3,11とアーティスト10年目の想像」 水戸芸術館 2021、「もやい展」タワーホール船堀 2021、「あざみ野コンテンポラリーvol.10しかくのなかのリアリティー」 横浜市民ギャラリーあざみ野 2019、「星座を想像するように。過去、現在、未来」東京都美術館 2019、「航行と軌跡」 国際芸術センター青森 2015、「VOCA展2015」上野の森美術館 2015、「醤油倉庫レジデンスプロジェクト春会期」 瀬戸内国際芸術祭 2013、「VOCA展2013」上野の森美術館 2013など。
Photo by Kenji Chiga
大小島真木 (Maki Ohkojima)
現代美術家。異なるものたちの環世界、その「あいだ」に立ち、絡まり合う生と死の諸相を描くことを追求している。 インド、ポーランド、中国、メキシコ、フランスなどで滞在制作。2014年にVOCA奨励賞を受賞する。2017年にはアニエスベーが支援するTara Ocean 財団が率いる科学探査船タラ号太平洋プロジェクトに参加。主な参加展覧会に、「Re construction 再構築」(2020年、練馬区立美術館)、「いのち耕す場所」 (2019年、青森県立美術館)、「瀬戸内国際芸術祭-粟島」(2019年)「鯨の目」(2019年、フランス・パリ水族館)。 主な出版物として「鯨の目(museum shop T)」など。現在、角川武蔵野ミュージアム(埼玉)でのアマビエ・プロジェクト に参加、エントランスに「綻びの螺旋」を展開中。
http://www.ohkojima.com/
リア・ジロー (Lia Giraud)
フランス在住アーティスト。ドキュメンタリー映像を専攻後、ビジュアルアート博士号(SACRe/PSL)取得。マルセイユ国立高等美術学校(INSEAMM)写真科教授。 リア・ジローのインスタレーション作品は、科学技術の影響を受けた現代の、生物に対する概念や関係性の変化を10年以上にわたり探求してきた。生物学的現象、テクノロジー、画像システムを組み合わせたプロセスを重視する作品群は、繊細な対話を通して、私たちの環境経験を問い直し新しいエコロジーを提案する。科学と社会のフロンティアで学際的な研究エコシステムの構築を目指し、自然科学の研究者、思想家、芸術家、市民を巻き込んだプロジェクトを展開している。彼女の作品はフランスをはじめ世界各国の美術館やフェスティバル、メディアで紹介されている(ポンピドゥー・センター、ル・サンキャトル、ル・キューブ、ル・ベル・オルディネール、ル・フレノワ、Naturpark Our、NYUAD Art Gallery、
Festival Images de Vevey、Dutch Design Week、Artpress、Arte、Wired、Vice等)。