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加速するデジタル社会にニヒリズムとポップを融合した一石を投じるステファン・ブルッゲマン。 3 年ぶりの個展「ALLOW ACTION (GOLD PAINTINGS)」


Stefan Brüggemann《Hyper-Poem (Like)》2021



Stefan Brüggemann《Hyper-Poem (Unleashed)》2021


KOTARO NUKAGA(六本木)は、2021年9月18日(土)から10月23日(土)まで、ステファン・ブルッゲマン個展「ALLOW ACTION (GOLD PAINTINGS)」を開催。ブルッゲマンの個展は、2018年10月の柿落とし以来3年ぶり、2回目の開催となる。
ステファン・ブルッゲマンはロンドンとメキシコシティーを拠点に、彫刻、映像、ペインティングやインスタレーションなど、異なる領域を横断しながら制作を続けるアーティスト。我々が日常的に目にする、ニュースやSNS、街なかに溢れる広告などのテキストを、辛辣な現代社会批評とポスト・ポップの美学的視点を交えて巧みに組み合わせ、日々加速するデジタル社会にはびこる矛盾をあぶり出す。鮮やかな色彩と鏡やネオンサインといった身近な素材を操り、時代性を読み取る透察力をポップに具現化する手法が高い評価を得ており、2019年にはパリのポンピドゥー・センターで個展を開催するなど、各国で展覧会やプロジェクトを展開している。


Stefan Brüggemann《Hyper-Poem (Free Black)》2021


今回の個展「ALLOW ACTION (GOLD PAINTINGS)」で発表されるのは、2020年のコロナ禍ににおけるロックダウン期 間に新たなシリーズとして生まれた「Gold Painting」シリーズの新作10点。紀元前から高貴な人々だけが装飾品として身にまとい、儀式や葬いで象徴的に用いられるなどスピリチュアルな存在であり続ける金。その後、1816年にグレートブリテンで貨幣の価値基準として金を用いる「金本位制」が施行されるなど、価値の高いものの象徴として経済的な面でも珍重されてきた。このスピリチュアルと経済という相反する局面において、その価値を変動させ続ける金から作られる金箔を作品に用い、ブルッゲマンは不確かな現代における物の価値を問いかける。「Gold Painting」は、カッティングシートに写しとったテキストを木製パネルに貼り付けた上から、金箔をラフに手で擦り付けながら何層も重ねた後、パネルの裏面からタッカーを打ったり、ナイフで表面を傷つけたりすることで描かれる。そうすることで、身体的な動きの痕跡や金箔の裂け目から見える下地の色の重なり、所々めくれ上がった金箔の風合いなど、それぞれに表情の異なる作品が生み出された。表面を覆う金箔は微かな光をも反射し、作品につけられた傷や微かな起伏は露わになり、 増幅されます。それはそのまま、作品上に現れる文字列の向こうに途方もなく広がり続ける、デジタル社会に氾濫するテキストの洪水を想起させる装置となるのだ。



Stefan Brüggemann《Hyper-Poem (Control)》2021


展覧会ステートメントは以下


私のシンプルな作品は私たちの価値観を問い直し、現在のノイズを切り裂いていく。思想的に不安定で経済的な変動も激しいこの時代に、私たちは信念と不安の経済へ投機する者となった。つまり、私たちの価値観も生きる意味も両方、長い不況に直面しているだろう。私のHYPER-POEMに由来するテキストは、静止画が無秩序に並ぶデジタル社会から の、暗号めいた言葉の抜粋である。こうした皮肉的な言語の断片は集団の夢想から抜け出し、私たちの生活を覆う経済 に対する過剰な投機から逃れるための亀裂を作り出す。新たな場所で、私たちは別の視点から価値観を見つめ直すこと ができるかもしれない。 様々な質感とうっとりさせるような抑揚を持つ、この反射的な表面は私たちを深い思考へと誘い込む。鑑賞者が空間を 移動するたびに光は金箔の上で踊り、そして遊ぶ。そうすることで作品は、反射する時間と空間、憶測が深い思考へと 移行する静寂な時間を求める。傷跡や留め跡のあるキャンバスは信仰心と経済的な価値観の融合の難しさを演出してい る。しかし、私はこの介在に金色を一筋裂いて両者を横断し、現在の不確かさに向けて皮肉な対抗手段を表している。



Stefan Brüggemann《Hyper-Poem (Soul to soul)》2021


HYPER-POEMは、「フォローする」「いいね」「UNSUBSCRIBE」「投稿する」など、デジタル社会で日常的に目にする言葉の断片をつなぎ合わせることで生まれる、スローガンのような、ブルッゲマン特有の風刺詩。簡潔な言葉の組み合わせの妙から生み出されるテキストは、現代社会への辛辣な批評的な眼差しを通して紡がれ、ニュース配信やSNS投稿の無慈悲さを突きつける。私たちの社会的営みが日々吐き出し世に氾濫するこれらのテキストと、価値ある金を等価に扱うことで、価値そのものを疑い、転覆させることを目論むブルッゲマン。私たちが対峙して疑いを抱き、深い思索に 落ちることを許す行為(=Allow action)そのものも彼の作品だとするならば、目も眩むような金箔の向こうに広がるテキストの海で、私たちは何を見つけることができるのだろうか。


ステファン・ブルッゲマン「ALLOW ACTION (GOLD PAINTINGS)」
会期: 2021年9月18日(土) – 10月23日(土)
開廊時間: 11:00-18:00 (火-土) ※日月祝休廊 ※国や自治体の要請等により、日程や内容が変更になる可能性があります。
会場:KOTARO NUKAGA(六本木)
〒106-0032 東京都港区六本木 6-6-9 ピラミデビル 2F
アクセス: 東京メトロ日比谷線、都営地下鉄大江戸線 3 番出口から徒歩 3 分



ステファン・ブルッゲマン Stefan Brüggemann
1975 年 メキシコシティ、メキシコ生まれ。ブルッゲマンは、メディアや広告、SNSに至るまで夥しい数のテクストが溢れる現代社会で生じる様々な矛盾を、言葉やアプロプリエーション(流用)を通して作品化する。主にポスト構造主義や脱構築、ニヒリズムの思想をベースにしなが ら、「コンセプチュアル・ポップ」と自身が呼ぶように、理論とポップな手法を融合させる。トートロジー(同語反復)やミニマルで普遍的な言葉を用いるものの、それらが挿入される場所性や文脈から想起される問いは、常にその言葉を読み解く個人に向けられる。時代に合わせて言葉の再定義をするのと同じく、金箔からネオンライトまで様々な素材を扱い、美術における技法や素材の意味の再定義も試みる。2019 年にパリのポンピドゥー・センターで作品を展示するなど、各国で展示やプロジェクトを展開している。

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